組織開発においては、個人の課題や悩みなどへの対応が付随してきますので、これら個人の課題に積極的に対応・解決しながら組織全体の活動課題の解決と両立させる手段が必要です。この手段としてキャリア面談でキャリアカウンセリング(経験代謝)を主体として使いながら、同時に必要に応じて対話型組織開発を行ってゆくのが『キャリアカウンセリング型組織開発®』です。『組織のコミュニケーション・プロセスに入り込んで、マーケティングやイノベーションにつながる創発が行なわれる様に、組織の支援を「並走型」で行うこと。』と定義をしています。
全体の対話の場づくりよりも、マネージャー等の組織や個人の課題や組織内部における個人間のコンフリクト(軋轢)の解決を重視し、その解決への道筋を経る中で、各人の経験の統合による組織活性化を行うことです。そのコンセプトは表すと次のようになります。『新市場創造型商品・新サービス・新事業をサスティナブルに創発できる創造的組織開発』
企業の存続・成長に不可欠なマーケティングやイノベーションにつながる創発が、組織内で実現を出来続けることを目指します。
キャリアカウンセリング型組織開発®は、主に社会構成主義を前提としMRIブリーフセラピーを基本としたキャリア面談(個人支援である広義のキャリアコンサルティング)とプロセス・コンサルテーション(組織開発)を合わせて行うことです。その為に、これらの構成要素である「社会構成主義」「対話型組織開発」「経験代謝の活用」「経営組織論」の理解が必要になります。
ここでは、これらについての概略の解説と参照図書等の紹介等の情報提供を行っています。
また、組織開発とマーケティングまでを統合する概念として「意識マトリックス理論」を紹介しています。
注)「対話型組織開発」においていわゆる「キャリアコンサルティング」を活用しますが、「経験を聴く」ことを中心とした「経験代謝」の関りが重要なので、「キャリアカウンセリング型組織開発®」としています。
《キャリアカウンセリング型組織開発®の実施に関するお問合せや個別の詳細解説等について別途承っております。》
以下、主要項目になります。これらがキャリアカウンセリング型組織開発®におけるリベラルアーツとなります。
社会を個人の発する言葉とその意識で構成された集合体と捉えて考えます。対話型組織開発の根底に流れるマインドセットになります。
キャリアが形成される組織は、構成員の発する言語及びその共通認識(ディスコース)によって構成されているものとして捉えます。
特に、その流れの中でMRIブリーフセラピーの活用を重視しています。
社会構成主義をベースとした対話型組織開発の対話についてキャリアコンサルティングをベースとして進め、経営組織論等も踏まえながら、組織活動全体の改善を目指します。
プロセス・コンサルテーションとしての関りの姿勢を重視しています。
「経験代謝」は、JCDAが推奨するキャリアカウンセリングのメカニズムです。
経験を傾聴することによって、個人の内省を促し、個人の自己概念の成長と周囲環境(組織)との関係性の改善を図ります。
それぞれの経験の統合による組織の活性化を目指します。
意識マトリックス理論を踏まえて、幅広い組織活動において活かすことができるメカニズムです。経験に対する傾聴とリフレクションを関りの基礎としています。
バーナードは著書「経営者の役割」の中で、
組織を社会目的の達成をする為の人の諸力によって構成された協働システムと捉えました。
ここでは、社会構成主義の観点から「諸力」を「組織を構成メンバーのナラティヴ」とし、組織をこれらによって構成されているシステムと捉えてアプローチをします。
キャリアカウンセリング型組織開発®の基礎となる「社会構成主義(と本質主義)」、「対話型組織開発(プロセス・コンサルテーション)」、「経験代謝」、「経営組織論」は一見つながりが少ない様にも思われますが、意識マトリックス理論(井上昭成,2020)でこれらを一つの関係性の枠組み中で理解することが出来ます。統合して把握する事により、マーケティングやイノベーションとの連動をも可能にしてゆきます。
キャリアカウンセリング型組織開発®は、社会構成主義のマインドセットに立ちながら、対話型組織開発をベースに、プロセスコンサルテーション、経営組織論、M.P.フォレットの思想、経験代謝のメカニズムを活用し、これらを「意識マトリックス理論」により統合したものです。
「キャリアカウンセリング型組織開発®」の源流のひとつが、1920年代のM.P.フォレットの思想になります。
「個人、組織、社会の関係をすべてプロセスとみなすことにある。すなわち、個人が他者との相互作用を通して組織という社会過程をつくり、さらに組織と組織、個人と組織のそれぞれの相互作用の中で社会ができるというように、「個人―組織―社会」と連なる動態的プロセスとして三者の関係を捉えている。」を理論的な基礎としています。
個人毎の経験に基づく組織に内における相互作用における軋轢(コンフリクト)をどのように統合するかが重要になります。
この考え方を現代社会において実践するにあたって、「キャリアカウンセリング型組織開発」では、次のように考えています。
「社会構成主義」に基づいた「対話型組織開発」において、「傾聴とリフレクション(JCDAの経験代謝)」による「キャリアカウンセリング」を対話の軸として実施し、組織の改善を実現します。まずリーダーの組織目的をナラティヴとしてメンバーに伝達し、それを受けてメンバーからよりも、組織目標を念頭に置いた上でのより良い職業生活の実現の為にどうしてゆくのか、ナラティヴやディスコースの集約を行います。これらをもとに、組織やリーダーを含めた環境全体への働きかけが行います。このように組織内のナラティヴ・ディスコースの変化を起こすことにより組織の変革につながり(MRIブリーフセラピーによるダブル・ループ学習の実現)、その結果として、組織全体の活性化が進むことになります。
キャリアカウンセリング型組織開発®の考え方
キャリアカウンセリング型組織開発®の視点は、キャリアコンサルタントが組織内キャリアコンサルティングを行う際に、組織開発を意識して、より社会的に有意義な環境を達成する点にあります。
もう一つの視点が、日々どのような組織においても絶えず行われている売上や利益を増加させる為の改善策等の組織パフォーマンスを高める為の各種の取り組み、これらも組織開発と言えますが、その効果を高める為にも、キャリアカウンセリング(経験代謝)の活用を推進してゆくことです。
組織開発においては、個人の悩みや各種の課題に対するアプローチ方法がまだ十分に明確でないともいえます。一方で、組織の個人に対するキャリアコンサルティングにおいては、クライアントの概念に変化を与え、その変化が組織にも影響を与えるという視点から、組織内におけるキャリアカウンセリングでも常に組織への働きかけを意識する必要がありますが、どのように意識すれば良いのかはまだ明確にされていない面もあります。このような組織開発とキャリアコンサルティングの課題をつなぎ合わせ、そのそれぞれの課題点を解決する手法が「キャリアカウンセリング型組織開発®」です。
ほとんどの社会人が組織に関わっていることを考えれば、それぞれの組織の改善(=組織開発)を行うにあたって、個人のマインドフルネスを高める為のキャリアカウンセリング(経験代謝のメカニズム)が必要とまります。このように、「傾聴とリフレクション(JCDAの経験代謝)」を使ったキャリア面談にて、経営組織論を踏まえながら組織開発に活かすことを「キャリアカウンセリング型組織開発®」として定義しています。
キャリアコンサルティングは、組織におけるキャリアに関する「セルフマネジメント」をサポートする事、キャリアカウンセリングは、「セルフマネジメント」に対する動機付けをサポート「セルフアウェアネス」を向上させるものと位置付けています。
☆キャリアカウンセリング型組織開発®のマインドセット
キャリアコンサルティングを通して組織への働きかけが行われた場合でも、少なからず組織の変革が発生します。組織の変革を起こすということは、組織開発と捉える事が出来ます。つまり、組織内キャリアカウンセリングは組織開発を伴うものだと言えます。このことから、キャリアカウンセラーのカウンセリング自体に対するマインドセットが、そのクライアントが対象とする組織にも大きく影響をすることになります。
しかし、キャリア(コンサルティング)カウンセリングにおいては、クライアントに関する組織への働きかけがどのようなスタンスで行われるべきなのか、まだ一般的にはあまり明確にはされていません。そのキャリアカウンセリングを有効にするには、その環境である組織に働きかける必要があるという視点だけが明示されています。例えば、ロジャーズ型の傾聴を主体とするカウンセラーでも、組織に働きかけようとする瞬間から、クライアントとの間で形成された自己の概念に基づいて、そのカウンセラーが主体的に組織に働きける事になります。その主体となる自己概念自体がどのように生成されるのか、環境である組織にはどういう姿勢で働きかけるべきなのかという点についても不明確にも感じます。また、再びカウンセリングに戻った時にカウンセラーは、組織に対する働きかけを通じて生成された自己概念から脱却し、本当に純粋に傾聴に戻れるのかという疑問も出てきます。
そういう意味からも、カウンセラーとしてのマインドセットはしっかりと確立された上で、キャリアコンサルティングは行われるべきだと考えています。この観点から、「キャリアカウンセリング型組織開発®」においては、「キャリア面談(キャリアコンサルティング)」のマインドセットを「社会構成主義」におくことにしています。 「プロセス・コンサルテーション」におけるマインドセットとも共通点があることになります。
「キャリアカウンセリング型組織開発®」では、キャリア面談を通した組織への働きかけは個々のカウンセラーの自己概念や彼らの経験のみに基づいて行われるのでなく、これまでに確立された組織開発や組織論、マネジメント理論の知見を踏まえて行われるべきだと考えます。一方で、社会構成主義の立場をマインドセットにしますので、それらの知見はあくまでキャリアコンサルタントのバックボーンを形成するものということになります。
「キャリアカウンセリング型組織開発®」でのキャリア面談(キャリアコンサルティング)では、クライアントの環境をこれらの理論的な知見を理解したうえで把握することを目指しています。
想定しているキャリアコンサルタントのイメージとしては、社会構成主義をマインドセットとしているCDA(キャリア・デベロップ・アドバイザー《キャリア開発支援者》)が、対話型組織開発、特に、プロセス・コンサルテーションのスタンスで組織開発に関わることが大切になります。
一番大切な事は。社会構成主義を理解して利用するのでなく、社会構成主義のシステム内で活動を行う事が肝要になります。
社会構成主義で大事なポイントとして、「モダン」「ポストモダン」の取り扱いがあります。
「モダン」を現代、現代風と訳されることもあるが、ここでは「近代」として把握します、一般的なイメージではどちらかというと「前近代」という感覚になると思います。
現代は「Contemporary」「Present day」とします。
現代は「モダン」的な考え方から、「ポストモダン(ポストモダニズム)」へ移り変わっている状態と捉えています。
そのような状況の中で社会構成主義は、「モダン」を批判し「ポストモダン」へと向かう考え方になります。但し、社会構成主義と「モダン」の考え方である「本質主義」は是非を争うものではなく、実際は共存をしているというスタンスを取ります。
組織開発では、過去の学校教育などを通じて獲得された「モダン」をベースとしたマインドセットを「診断型」、ポストモダンを前提としてマインドセットを「対話型」と想定しています。また、対話型の源流は「社会構成主義」になります。
キャリアカウンセリングについても、検査によるマッチングを重視するような「モダン」をベースとする「診断型」のみの取り組みと、ナラティヴ・ブリーフセラピーや経験代謝のメカニズムを重視した「ポストモダン」をベースとする「対話型」の取り組み(構成主義的)では、結果として組織や社会に与える影響は違ったものになると考えています。但し、「診断型」と「対話型」が実際は共存するという考え方がキャリアカウンセリング型組織開発®での「対話」のスタンスになります。