キャリアコンサルティング(カウンセリング)の進め方


 キャリアコンサルティングの進め方については、組織の中でうまく対応が出来るようにクライアント自身に「セルフマネジメント」を認識してもらうことを重視しています。その為の動機付け等が不明確だったりする場合は、「キャリアカウンセリング」を通して「セルフアウェアネス」を高め、「セルフマネジメント」が主体的に実現出来るように支援しています(※1)。

 職場での悩みなどについては、「キャリアカウンセリング」として傾聴を重視し、サビカスのキャリア構築理論を基本に「ブリーフセラピー」のアイデアも組み合わせながら、課題の認識の解消を図ってゆきます。また、「セルフマネジメント」に意識を集中することによる充実感(マインドフルネス)を感じられることも目指します。

 基本的な姿勢としては、「組織社会で健全に過ごしてゆくにはどうすれば良いのか」という点に焦点をあてます。

 「キャリア開発」は、個人の働き方の「未充足ニーズ」を満たしてゆく事でもあると捉えています。その観点からマーケティング手法も取り入れ、「意識マトリックス理論」等の枠組みを意識しながら、幅広く組織社会で活躍できるようにキャリア支援を進めています。

 キャリアやセルフマネジメントについての助言やアドバイスに関しては、キャリアを取巻く環境である「組織」の知識が必要です。その為には、経営学の「経営組織論」や「マネジメント」の考え方を踏まえることが重要になります。

 キャリアコンサルティングを通じて組織への働きかけが必要になった場合には、「対話型組織開発」を基本とし、個人と組織に双方にメリットのあるように提案を行うことが大切だと考えています。 

 キャリアコンサルティングは、コンサルタントとクライアントの協働作業ですので、一方通行にならずに、来談者の目的の明確化を通じて、面談が効果的に進むことに注意を向ける必要があります。



キャリアコンサルティングとは

 労働者(求職者も含む)の職業選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、

助言及び指導を行うことをいいます。(職業能力開発促進法第二条第五項)

〈説明〉

 キャリアコンサルタントとは、本人の興味・適性の明確化や職業生活の振り返りを通じて職業生活設計を支援し、職業選択や能力開発の自信・意欲の向上、自己決定を促す支援を行う者。自身にあった職業を主体的に選択できるようになることが期待できます。


キャリアカウンセリングの定義(JCDA)


 キャリアカウンセリングとは、発達的視点に立って、成長と適応という個人の積極的側面に強調点を置き、個人が環境の中で効果的かつ自律的に機能できるように支援すること。自己概念の開発を通してキャリア形成を図ること。

(参考:キャリアカウンセリングとは何か(改訂版)JCDA)

〈定義の説明〉

 キャリアカウンセリングは人間が社会的な存在であることを重視しています。自分が育った国の文化や社会環境、その中での経験、つまり個人を取り巻く人間関係に影響を受けており、それら全体との関係の中で個人を捉えることが重要だと考えます。

 そのような全体(社会)との関係性の中で、人間が生まれて成長に向けて進もうとする存在の中核概念として「自己概念」があります。キャリアカウンセリングは、自己概念の成長を促す働きかけであると考えます。


(※1) このホームページにおける「キャリアカウンセリング」とは、JCDAの「経験代謝のメカニズム」(傾聴とリフレクション≪反映≫)を基本としたキャリアカウンセリングを基本としています。 

 キャリア面談(広義のキャリアコンサルティング)には、キャリアコンサティングとキャリアカウンセリングの両方の側面が含まれているとしています。キャリアコンサルティングとキャリアカウンセリングの違いに関する定義の解説は木村先生によるこちらになりますが、ここでもあえて分けて捉えています。



 キャリアコンサルティングの進め方の一例は次のようになります。

詳しい内容の説明は別途に勉強会(無料アーカイブ有)で具体的展開として共有しています。

基本的には、上記の図を踏まえて、次のようなイメージでキャリアコンサルティングを進めてゆきます。

 

                           (CC:キャリアコンサルタント・CL:クライアント)

「来談目的」:来ようと思った理由。まずはCLが気になっていることを確認。

「主訴」:(将来に向けて)クライアントがなんとかして欲しいと思っている課題

✖CCが課題(主訴)を設定(構成)しない。 = CLが自身で言語化し再認識が出来るように支援をする。

「組立て(見立て)」:主訴を解消する為の手順(CCが立てる見通し)(組立②・組立③)
            (主訴を明確化する為の手順(組立①))

「主訴の解消」:「目標設定」「行動計画」「行動支援」

     主訴を解消する為の行動テーマ (= 行動変化)を

    決めて、行動に移してゆく。

⇒CLにとって荷物になる

⇒重すぎるとのことであれば、CLの主訴の変更へと向かうように働きかける(リフレーミング)

 


⑫企業(対話型組織開発)におけるキャリアコンサルティングの進め方

 

 職業紹介場面や企業内カウンセリング、ジョブカードの面談では、当初から来談者が大きな不安を抱えている事や積極的にキャリアコンサルタントにへ自身の悩みを表明するということも少ないと思います。一方で、相談の背景にメンタル的な問題などが隠されている事もありますので、注意が必要です。

 (図表にもあるように、ブリーフセラピーの考え方も取り入れながら進めます。[  ]の部分。)

 

☆ここでの来談目的は「キャリア面談」や「就労に向けての支援」を想定しています。

 主訴は、来談者が困っていて解決したい事なので、これは個々の面談で異なります。

 キャリアカウンセリングの進め方としては、基本的には以下のように考えています。

(「経験代謝」の基本「経験の再現」⇒「意味の出現」⇒「意味の実現」のサイクルも押さえています) 

  1.  まず一番に気をつける事は、面談ではクライアントの精神状態の状況を事前に把握することは難しいという前提で対応する点です。もし、通院歴が明らかな場合は医師がなんと言っているのか、それについてクライアントがどう感じているのかを、まず確認するのが当然です。基本的姿勢として大切になります。
     キャリアコンサルタントそれぞれのリファーポイントを踏まえながら、新規のクライアントに対しては、自身のリファー対象であるのかないのかをまず確認しながら接することがまずは大切です。
  2.  インテークでは慎重なクライアントへのアプローチが必要です。クライアントの状況を把握できるまでは、クライアントの心を傷つけるかも知れないような過去の経験にいきなり踏み込むことや、精神的なリスクを負うこともあるいわゆる「状況の情報収集」という点に関心を持ち過ぎないことが大切です。
  3.  クライアントの話したい事だけを話してもらうというスタンスを大切にします。
     クライアントの問題を確認し、枠組みとしては問題に沿った経験を語ってもらう事が大切で、その枠組みの中でクライアントが話したい事だけを話してもらうということが大切です。枠組みを確保しないと、クライアントの話があっちこっちと飛んでしまい、クライアントの相談したい課題の改善に辿り着かなく危険性があります。
     カウンセラー主導の質問によって、いきなり無理にクライアントに過去の「経験」を振り返させないように注意します。
    カウンセリングに必要な情報はクライアントが自ら語るという認識が大切です。
     クライアントが話もしていないのに、見立てとしてカウンセラーの方が主体的に問題を構成するような関りは避けたいものです。
  4.  クライアントが大切に思っている事は、それがどのような経験を経て踏まえて形成されたのかを慎重に聴きます。
     クライアントが問題だと思っている課題(=主訴)、それに付随する経験に注意を集中する必要があります。面談の「組立て」は、クライアントの主訴に応じ設定します。
     クライアントの主訴の変更があって初めて「組立て」も変更するようにします。カウンセラーが勝手に一方的に「組立て」を創るものではありません。
  5.  状況に応じて「経験代謝」での「過去の経験」よりも、「意味の実現」の部分である「ありたい自分」(理想の状態)に焦点をあててみるようにします。この視点は認知行動療法的アプローチを使う場合でも役立ちます。
     目的の明確化によって、カウンセリングの枠組みを明確にして上で、クライアントに自由に語ってもらうことが大切です。
  6.  「悩み」をクライアントが主体的に語る場合は、その「経験」に寄り添います。
     (経験の再現)
    そうでない場合は、どちらかと言えば「ありたい自分」に焦点をあてて語ってもらいます。
     (意味の実現)
  7.  「ありたい自分」(意味の実現)が明確である場合は、その素材となる「経験」を出来る範囲で語ってもらいます。
    (経験の再現⇒意味の出現)
  8.  良かった「経験」については、クライアントに積極的に語ってもらうようにします。
     (経験の再現)⇒(意味の出現)[Do Moreにつなげます。]
  9.  クライアントが現在「解決」に向かっている点があるのであれば、[Do More]をサポートします。 
     (意味の実現)
  10.  クライアントが今「うまく行かない」と思っている時は、語ってもらえる範囲で、そのもととなる「経験」に焦点を合わせてみて、その時の「自己概念」を認識・確認してもらいます。
     (経験の再現)⇒(意味の出現)
     その経験をもとに、内省を促し自己概念の成長を図ります。自己認識のリフレーミングや経験の統合を目指します。
     合わせて、その逆のうまく行った「経験」が今までになかったかを確認します。
    (経験の再現)[MRIアプローチ]
  11.  面談を通して、クライアントの「なりたい自分」や「うまく行っていた」時に近づく為の「目標の設定」をサポートします。この流れでうまく行けば「Do More]で「ありたい自分」に、将来にわたり近づいてもらうようにします。
    (意味の実現)
  12.  クライアントの主訴に対しての満足度が高くなるように、関わることが大切になります。マインドフルネスの向上が図れるように意識して関わってゆきます。
  13.  インテークでは、まず相談者の「主訴」をしっかりと押さえることが大切です。
  14.  ここまでの流れの中で「経験代謝」としてクライアントの「経験」には触れる事になると思います。そこからは、「経験の再現」⇒「意味の出現」⇒「意味の実現」へと基本的には回してゆく意識が基本になります。キャリアコンサルタントの中では、(「来談目的の確認」⇒)「経験の再現」⇒「意味の出現」⇒「意味の実現」⇒(経験の意味づけ・再構築⇒)「経験の再現」を常に意識する必要があります。
    [円環的反応(円環的因果律)]
  15.  「主訴」が確認出来たら、クライアントの現状とありたい状況のギャップを埋める為の「(意味の出現⇒)目標設定」「行動計画(意味の実現)」「行動支援(意味の実現)」と支援を進めてゆきます。ここではクライアントの「興味」「能力」「価値観」を共有して進めることが大切になります。

 

(「来談目的」や「主訴」という基本的な語彙も各種団体間では定義が違っていますが、ここではJCDA(CDA養成講座)での定義を基準にしています。)


  具体的な進め方の1例としては、キャリア構成主義の視点から過去のストリーを確認するという意味で、まず履歴書(職務経歴書)をもとに略歴を確認(構築)します。次にそれをもとにコンサルタントが作成した履歴書(職経歴書)の形でクライアントの略歴を提示してコンサルタントから見た来談者の略歴を提示します(脱構築)。来談者はそれを参考にしながら、自分で「履歴書(職経歴書)」を作成(再構築)することにより、新たな「目標」を意識しながら前に進んでもらう事も出来ます。

 「セルフマネジメント」の支援は、カウンセリング理論でウィリアム・グラッサー(William Glasser 1925~)によって提唱された「現実療法」に近いかも知れません。「現実療法」とは、(クライアントに言い訳を許さず、)人生がコントロールできるものだと感じられるようにすることを目ざします。キャリアコンサルティングでは言い訳等を許しますが、その言い訳について内省を経て再構成(リフレーミング)することが大切になります。この為には「経験代謝のメカニズム(傾聴とリフレクション)」が重要となります。