組織開発とは


 組織開発の基本的な説明については、ODNJのホームページに記載されていますので、こちらを参照ください。


 組織開発については、基本的にはまず下記の2冊の書籍によって把握して頂くことが出来ると思います。

 

「入門 組織開発

    活き活きと働ける職場をつくる」※1

 (中村和彦 著 光文社 2015年5月)

 

「組織開発の探求

    理論に学び、実践に活かす」 ※2

 (中原淳+中村和彦 著 ダイアモンド社 2018年10月)


 上記の書籍より、組織開発について簡単に確認しておきます。

 

 組織開発の本来の意味は、「組織内の当事者が自らの組織を効率的にしてゆく(良くしてゆく)ことやその為に支援」です。(※1  P70)

 

組織開発の定義と目的

 基本的には、組織開発は「組織のプロセスに気づき、良くしていく取り組み」といえます。多くの定義で共通しているのは、

  • 行動科学の理論や手法を用いること
  • 組織の効率性や健全性を高めてゆくこと
  • 組織のプロセスに対して計画的な働きかけをする取り組みであること

 組織開発らしさが込められた定義はウォリックのものです。彼は、

 「組織開発とは、組織の健全さ(health)、効果性(effectiveness)、自己革新力(self-renewing capabilities)を高める為に、組織を理解し、発展させ、変革していく、計画的で協働的な過程である」と定義しました。

(※1 P81)

 

[行動科学については現在少し不明確になっていますが、狭義の行動科学として、アージリス・センゲの「組織学習」やシャインの「経営心理学(組織心理学)」が、組織開発の基礎理論と捉えると理解がしやすいかも知れません。」

 

二つのアプローチ

 組織開発の進め方について、ブッシュ&マーシャックは「診断型組織開発」と「対話型組織開発」に大別できるとしています。

 診断型組織開発は、診断というフェーズが入る取り組み

 対話型組織開発は、診断というフェーズがない取り組みや手法を指します。[組織開発を社会構成主義の立場で再定義したもの]

(※1 P84&87)

 

☆組織開発は風呂敷である!?

 いったい組織開発とはなんなのか?

 この問いに関する答えは、「組織開発とは”風呂敷”のようなものである。」

 組織開発という言葉は、比較的自由に、その内部に存在する多様な概念を包括してしまうのです。

 (注記:組織開発が何かは明確に語りえぬものです)

(※2 P31)


 組織開発について初期の基本となるクラッシクシリーズ「職場ぐるみ訓練の考え方 Organization Development : its nature origins prospects (1969)W.G.ベニス (Warren G. Bennis) 高橋達男訳 1971年7月 産業能率大学出版部」からも確認をしてゆきます。

組織開発の対象組織はクライアント・システム(Client System)であり、システムに介入するという視点が大切です。

 

「このように、日常問題と長期の問題の両方、これとともに個人と躍動する組織の双方を同時に処理できる能力こそは、自己刷新する企業の真髄であり、組織開発の目標でもある。(p80)」とされています。

 

「組織開発とは何か。(P24~)では、

1.組織開発とは組織変革を計画的にやるための教育戦略である

2.求める変革と企業が克服しようと努力をしている急務もしくは要請とが、直接に結びついていることである

次の3つの範疇に分かれる

1)運命 ━成長、本体、活を入れる━ の問題 [組織自体の問題]

2)人間の満足[能率]と啓発の問題 [コミュニケーション]

3)組織効率の問題

3.組織開発は実際の行動に重点を置いた教育戦略に拠っていることである

4.変革の使途(Changing Agent)は、すべというわけでないが大部分、お客(Client System)の組織外の人間である

5.組織開発には、変革の使途(Changing Agent)とお得意先(Client System)の構成員との間に協働(co-operation)的関係がなければならない

6.変革の使徒たちは、人間哲学、世界観とくに人間組織に関する価値体系を持っているということであり、これでお得意先に対する戦略が生まれ、介入の幅が決まり、また対応の仕方もおおむね決まってくる」と示されています。

 

「基本的命題」としては、(序文P5~6)

  1. 進化論的な考え方であって、年々歳々その年の風潮に最も適する組織形態が生まれてくるものであり、また特定の前例のない変化が起こって、組織を生き返らせ、再建せざるを得ないようになる
  2. 組織を変革しうる有効な方法としては、組織の「文化(カルチャー)」を変革すること、つまり、人間がその中で労働し、生活する仕組みを変革するしかない文化とは、人の生き方、信念と価値の体系であり、これを皆が納得してこそ相互作用と連携が生まれるのである
  3. 企業に携わる人々にとっては、その精神的祖先たる自意識とともに、社会的意識を新たに持たねばならない。」

「今日の世界における最大の話題は変化である組織開発(OD)はこのような変化に対する回答であり、信念、態度、価値観、組織構造を変革して、新技術、新市場、新たな挑戦、そして目が回るような急速な変化そのもに対し、もっとも的確に対処出来るようにしようとする手の込んだ教育戦略である。」(P4~5)と明示されています。

 

「☆チェンジエージェントないしは組織開発コンサルタントの役割および能力として、

 チェンジエージェントないしは組織開発コンサルタントの役割とは、曖昧なものである。組織開発に寄与することができるなら変幻自在に役割を変えていくものと考えてもよいであろう。

能力については以下の8点が挙げられる。

(1)行動科学についての知識があること。

(2)組織開発についての理論と方法を知っていること。

(3)援助をどこに求めたらいいのかを知っていること。

(4)役割の倫理的、評価的機能があるかを正しく理解していること。

(5)聞き、観察し、見極め、報告するといった信頼関係を創り出すことができる。

(6)自己を活用し、考え方を明確にして折り合うことができる人間的な円熟

(7)クライアントに自らの価値を一方的に押し付けない。

(8)役割モデルとなりお手本になることができる。」

とされています。

 


「対話型組織開発 その理論的系譜と実践 編集者 ジャルヴァース・R・ブッシュ ロバート・J・マーシャック

訳者中村和男 英治出版(株)2018年7月「序文 対話型OD--過去、現在、そして未来」では、次の点も指摘されています。

 

◉システム志向と複雑性(P27)

 グループ間に複雑な問題がある場合等、対話型ODが重視する生成かつシステム的な考えがそれぞれの文化や集団の歴史に基づくナラティヴを通じたお互いの違いを探索すること組み合わさることで、あらゆる適応的な学習の重要な要素になるだろう。

●将来に関する一考察(P28)

 世界はより複雑なもの、予測困難なもの、文化的に相互依存するものに変わりつつあり、適応性を持って対処する以外に方法がないような問題や課題にあふれているというのが私の実感である。それゆえに、私たちにはODプロセスが必要になるだろう。

 


 上記にあるように組織開発は多岐に渡る内容を含みます。その為、キャリアカウンセリング型組織開発®においても同様に様々な視点が必要となります。


 組織開発としての「キャリアカウンセリング型組織開発®」の定義は次のようになります。

『組織のコミュニケーションのプロセスに入り込んで、マーケティングやイノベーションにつながる創発が行なわれる様に、組織の支援を「並走型」で行うこと。』

 これには次のような視点が含まれます。

 『社会構成主義の視点からバーナードの『組織とは、社会目的を達成する為の人の「諸力」によって構成された協働システム」という定義を踏まえて、組織システムの順機能を伸ばして逆機能を押さえる活動、または組織システム自体の変更も考慮すること。

 フォレットが主張した「個人間の経験の統合」(妥協や抑圧でなく)を通じて、創発が生まれるようなプロセス(組織のナラティヴやディスコース)を実現する事を基盤とし、外部環境に適応するような個人の支援と組織の支援の両立を実現する試み。』

 



組織開発 メモ

  1. 「伴走型支援」⇒並走型支援
  2. 「私たち事へ」
      キーマン(スポンサー)
      変革リーダー
      事務局の存在
      支援者
  3. ファシリテーター
      「全員のプロセスにアプローチする」
  4. 重要な要素
      コミットメント
      エンゲージメント
      心理的契約
      「マネジャーの役割の再定義」⇒組織開発の成果としての変革の持続性
  5. アクションラーニング コーチ
  6. グループセッション
      最初の関り(ファーストタッチ)
      自己開示が大切
       ⇒関係性の向上
      目標の共有
  7. 人材開発(キャリア開発)と組織開発は切り分けられない
  8. 「リラックスした雰囲気での会話」⇔組織開発らしくない予測
  9. ユース・オブ・ユアセルフ
  10. 「健全性」と「効果性(Effectiveness)」が大切。
  11. プロセス(How) ⇔ コンテント(Fact)
     心理的契約・業績へのステップ・アイデア
      プロセスに光をあてる
  12. プロセスコンサルテーション
      「戦略的組織デザイン」
      エントリーと契約が大事
      「組織文化」「プロセス」
  13. 組織開発の定義
      ハードな側面
      ソフトな側面
       文化・リーダーシップ・「ヒューマン・プロセス」
  14. 組織開発とは
     「構造化されていない日常の中で、組織開発的な関りや働きかけを行うこと。」「組織行動論」
  15. プロセスコンサルテーションという姿勢
     =組織開発実践者の支援のありようが重要