経営組織論(マネジメント理論)


 組織に介入する為には当然ですが、「経営組織論」や「マネジメント」の基礎的な理解が大切になります。

 また、キャリアコンサルティングにおいても、クライアントのキャリア課題に対応する為には、個人のキャリアに影響を与え、キャリアを取巻く環境である組織についての知識も必要になります。この知識がクライアントの組織での経験をより明確にリフレクション(理解・反映)することを可能にします。

 「社会構成主義」「対話型組織開発」「経験代謝の活用」に続いて、組織開発の舞台であり、キャリアの環境でもある組織について「経営組織論」として確認をしてゆきます。

 

 古代では、組織が社会に浸透していなかった為に、ほとんどの人にキャリアの概念は必要なかったでしょう。近現代になり、組織社会が急速に人々の生活により浸透するにつれて、組織に付随する個人のキャリアが重要になってきたと言えます。この事は言い換えれば、組織社会の変遷に合わせて、人々のキャリア観も変化していると言えます。現代人のキャリアを考える為には、現代の組織社会を理解することが有効です。キャリア面談においては、クライアントが実際に属する組織を概念として把握することがクライアントの支援の為には必要になります。

 組織内でキャリアコンサルティングを実施するにあたっては、具体的には心理的契約や組織の有効性をどう捉えるか等の組織に関する知識が大切になります。組織自体の成立要因、その仕組みや歴史的経緯、マネジメント、社会的存在意義、組織の有効性、組織の心理学的な側面である産業心理学、そして現在の組織社会における組織の「社会的責任」等をも意識しながら、個人のキャリア開発や組織への働きかけ、その変革を好ましいと思われる方向に進めてゆくことが大切になります。

  

 ここでは社会構成主義の立場から組織を把握するにあたって、一般システム論を中心として考えてゆきます。これは経営学の祖と言われる、C.I.バーナードが著者「経営者の役割」の中で提唱をした理論です。また、M.P.フォレットの思想の影響も受けていると記述がされています。

 組織は「社会目的を達成する為の人の「諸力」によって構成された協働システム」と捉えます。共通目的(組織目的)・人の協働意志「貢献意欲」・コミニケションの3つの要素が組織活動のベースとなる協働の成立の条件です。組織存続の観点からは、組織をその外部環境に適応するためのシステムと捉えた「有効性(effectiveness)」と内部環境の調和のとしての「能率(efficiency)」の概念が大切になります。

 社会構成理論の観点から上記の組織を構成する「諸力」を「構成メンバーのナラティヴによって構成される認知の集合体」の変化と捉えて組織システムにアプローチするのが、キャリアカウンセリング型組織開発®における考え方になります。

 組織開発としてキャリア面談(広義のキャリアコンサルティング)を実施すると、クライアントの認知やナラティヴが変わり、その影響で彼が所属する組織のナラティヴにも変化を与えます。つまり、キャリアコンサルティングそのものが、実は「対話型組織開発」であるとも言えます。この事からも「組織開発」であるキャリアコンサルティングを通じた組織への介入、組織の集合体である社会への取り組みについては、組織自体の知識である経営組織論と「対話型組織開発」等を理解しておく必要があります。

 (参考 C・I・バーナード 飯野春樹編 経営者の役割 1979年 有斐閣


 経営組織の本質

 組織は「職務」と「職務の関係」を規定する事であり、従ってまた、かかる職務の相互間の構造を意味する。‥‥‥‥ここでも、また組織の中心課題が仕事と人の結びつきであり、従って職務の構成が焦点であることが示されている。なおここでは、組織を過程として見ているが、それは組織を動的に見ていることを意味している。

 

 高宮 晋 「経営組織論」 昭和36年6月 初版発行 昭和48年8月 29版 ダイアモンド社

第四章 経営組織の本質と委譲

第一節 経営組織の本質 より