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意識マトリックス理論②


 マトリックス理論①では基本となる「コミュニケーション領域における意識マトリックスマップ」の各領域について確認しました。続いて同じく「マーケティング実務における初心者理解促進と品質向上の為の定性調査体系の試み」(井上昭成,2020)より、

「調査主体側と調査対象側の意識の方向性」について確認します。

 マーケティングにおけるグループインタビューにおいて、正のグループダイナミックスを生み出しながら、新しいアイデアやコンセプトを「創発」に至る枠組みを提示しています。

下図の「調査主体側と調査対象側の意識の方向性」においては、

 調査主体側の意識は、自らの「商品・サービス」に向いており、

 調査対象側の意識は、消費者としての「生活」実感に向いています。

それぞれの領域の特性を確認してゆきます。

 

 ①C/C領域「話せる領域/質問できる」

  1. 調査対象側は「生活」への意識があり「話せます」
  2. 調査主体も「商品・サービス」への意識出来ていて「質問できます」
  3. 双方が意識が出来ていているので、「生活」に関する「商品・サービス」について現実的な確認ができる領域になります。
  4. 但し、双方が意識出来ているがゆえに、新たな気づきとなるような結果は得られない領域です。
  5. この領域のみの調査では、現状認識の肯定・強化という位置づけを持ちます。
    意識されている領域の分析結果ですので、言い換えれば、調査結果としては目新しさのないものとなります。

 ②S/C領域「話せない/質問できる」

  1. 調査対象者は、提示されている「商品・サービス」の生活での実感がないので「話せません」
  2. 調査主体は、自らの「商品・サービス」が意識出来ているので「質問できます」
  3. この領域では、調査主体が「商品・サービス」に関する意識はありますが、一方で調査対象者側がどこまで「商品・サービス」に関する意識があるのかは把握することが出来ません。その為に、調査主体はC/C領域と同様に調査対象側に意識があると仮定して、質問を進めてしまいます。
  4. この結果、調査対象者側は調査主体から、今まで意識をしたこともないような経験を訊ねられてしまう領域になります。
    調査対象者は実際の経験がないので答えようがなく解答がわからずに詰問(Asking)されているようにも感じます。
  5. この領域では、調査主体が「商品・サービス」に関する質問をしても、調査対象者側はそれまで伴った「生活」実感の意識がないので、表面上の受け答えをしてしまう可能性があります。意識マトリックス理論①で示したように、自らの「生活」経験に基づかない、その場で得た情報や一般的な知識を基に迎合的で当たり障りのない返答をしてしまいます。
  6. 「商品・サービス」に関する上記のような返答は、「生活」経験に基づいたものでないので、マーケティングの成果としてはあまり価値のないものになると伴に、逆に調査主体の意識が反映したものとなるリスクがあります。
  7. 通常のマーケティング調査では、調査主体の「商品・サービス」を意識した質問形式を採用することにより、この領域に入ってしまい、マーケティングの成果につながりにくくなる場合があります。
  8. 上記のような状況を避ける為には、C/S領域に展開し、調査主体は調査対象者の生活経験をまずよく「傾聴」する必要があります。

 ③C/S領域「話せる/質問できない」

  1. 調査対象者は、「生活」への意識があり「話せます」
  2. 調査主体は、既存の「商品・サービス」の認識範囲外ですので、「質問ができません」
    この領域は、調査主体が意図的な質問によって到達することが出来ないエリアです。
  3. この領域では、調査主体が調査対象者の「生活」実感に基づいた新たな「商品・サービス」の発見できる可能性があります。
  4. 調査主体が新たな「商品・サービス」の可能性を見つける為には、まだ意識が出来ていない調査対象側の「生活」に関する実感を認識する必要があります。
  5. この為には、調査主体は質問できないので、調査対象側の生活経験をしっかりと「傾聴」する必要があります。
    (ここでの「傾聴」は良く聴くという一般に想定されているものより、若干難しいものである。自らの「商品・サービス」に関する知識などを一旦棚の上において、積極的に(Active)に傾聴(Listening)する必要があります。)

 

 ④S/S領域「話せない/質問できない」

  1. 調査対象者は、生活実感としての「経験」が存在せず、「話せません」
  2. 調査主体も、既存の「商品・サービス」の意識外なので「質問できません」
  3. 以上の点から、通常の調査インタビューではなかなか到達が難しい領域です。
  4. この領域に到達する為には、C/S領域における「傾聴」と次に示す「ホンヤク(リフレクション)」やそれに伴う新たな「気づき」が必要です。
  5. この領域には、まだ誰も気づいていない「新商品」や「新サービス」が眠っている領域と言えます。

次は、「傾聴」や「ホンヤク」の役割を確認する為に意識マトリクス理論(メーカーと消費者の意識の方向性)に続きます。