プロセス・コンサルテーション


 シャインが提唱するコンサルティング概念。組織をコンサルティングするにあたり、外部のスキルを使って組織を指導するのではなく、その組織自体のプロセスに着目し、組織の自発的改善力を活かすようにコンサルティングを行うことです。
 キャリアカウンセリング型組織開発®を行う上で重要な考え方のひとつになります。
参考)「謙虚なコンサルティング」 (エドガー・H・シャイン著 金井壽宏監訳 野津智子訳 2017年 英治出版)


 こちらの組織開発勉強会の資料を参照をして頂いた方が視覚的に判り易いとおもいますので、まずご参照下さい。



プロセス・コンサルテーションについて

 「謙虚なコンサルティング」 (エドガー・H・シャイン著 金井壽宏監訳 野津智子訳 2017年 英治出版)の「はじめに」より

  

「本当の支援を速やかに行う方法」

コンサルタントの手助けによって、クライアントが

1)問題の複雑さと厄介さを理解し

2)その場しのぎの対応や反射的な行動をやめて

3)本当の現実に対処すること

が、本当の支援なのである。

☆注目すべきは、主語が「クライアント」である点。

クライアントが自ら道を見出だせるように支援しなければならない。(P8-9・P56)

 

 解決に必要な知識や技術が自明でない問題

 「適応を要する課題」

   クライアント自身が、学習をし続けて、ものの見方、世界の捉え方を変えてゆく(適応してゆく)必要がある

   文化的規範が大きく影響(P10)

 

 1960年代、‥‥‥私はプロセス・コンサルテーションというモデルを考案した。具合の悪い部分とその部分について何が出来るかを見出だすプロセスにクライアントを含めるべきだと主張したのだ。(詳細は1969年の『職場ぐるみの訓練の進め方』[産業能率短期大学出版部]及び1999年の『プロセス・コンサルテーション』[白桃書房]で述べている)。

 その後、数十年にわたりこのモデルを使って仕事をしたり著作を改訂するうちに、組織及び経営コンサルティングに用いているこのモデルが実はもっと幅広くあらゆる種類の支援関係に使える事がわかってきた。そこで出版したのが2009年の『人を助けるとはどういうことか』[英治出版)である。支援のプロセスを社会学的な観点から分析することによってさらに明らかになったのは、そうしたプロセスでクライアントとコンサルタントがそれぞれ果たすべきだと思われる役割について、我々の文化的規範がいかに大きな影響をもたらしているかということだった。(P13-14)

 

話す事への執着が、アメリカ経営文化の大きな特徴

   「診断し、次いで助言する」というアプローチは、あまり効かない。

     ⇅

   支援者がクライアントと最初の瞬間から、率直に話の出来る信頼関係を築く必要があること(P14-15)

 

 本書では次の点について述べようと思う。新たなタイプの問題、コンサルタントとクライアントが築くべき新たな関係、そして確かな支援を行うためにコンサルタントが学ぶべき新たな姿勢や考動についてである。(P15-16)

 関係の「レベル」やそれを決めるのに、何が深く関わっているかに触れているものになるとほとんどない。唯一の例外はオットー・シャーマー『U理論」[英治出版]だ。そこでは、イノベーションの本当の源(ソース)を見つける為に、自分自身の中で、また、人間関係の中でどうすれば最も深いレベルに到達できるかが分析され、会話のレベルに明確な違いがつけられている。

 そういった種類の問題を理解し有効な「次の一手」を生み出すのに極めて重要な理論とモデルを最初にまとめたのは、「ルース・カップリング」「センスメーキング」「間違いを受け入れる」「レジリエンス」という概念を用いて行われた高信頼性組織に関するカール・ワイクの研究だった。(ワイク&サトクリフ、2007年)。社会学の側面では、アーヴィング・ゴッフマンの相互作用と「状況適合性」についての分析が(ゴッフマン、1959,1963,1967年)人間関係を築き、維持し、壊れた時に修復する方法を理解するのに不可欠なモデルだと私はかねてから思っている。

 「組織学習」という体系的モデル(センゲ、1990年など)や家族療法(マダネス、1981年など)も深い係わりがある。「マインドフルネス」についての研究(ランガー、1997年)は新たなスキルとして今後必要となると私が思うものの中で特に重要だ。また、いわゆるリーン生産方式による改善プログラム━‥(中略)‥━は、もしうまく実行され、実際に作業をする従業員を巻き込むなら意義なるものだ(ブルセック、2014年)。タビストック・クリニックによって展開された問題の特定と解決の為のオープン社会技術システム論は、評価・分析・問題解決という標準的な手法よりはるかに役立つアイデアを提供してきた。

 もしかしたら最も重要なのは、ブッシュとマーシャック(2015年)がこの10年の間に明らかにしてきた「対話型組織開発」かもし知れない。これはハイフェッツ(1994年)のようなリーダーシップ論者たちも強調すること━今日の複雑な問題は、所定の方法を使えば解決できる技術的な問題ではないこと━に焦点を当てる際に「診断型組織開発」と対比して論じられるものである。(P17-18)

 突き詰めてみれば、私が拠り所にしているのはメイン州ベゼルにある全米教育訓練所(NTL)の人間関係ラボラトリーで感受性訓練グループを運営している時に学んだことだ。運営理念は「探求心」であり、学習プロセスによってどこへ導かれるか必ずしもわかる訳でないと受け入れることだった(シャイン&ベニス、1965年)。また、当時の目標はクライアントが「学び方を学べる」関係を築くことだったが、それは今では「謙虚なコンサルティング」のますます重要な目標のひとつになっている。(P18)


 新しいコンサルティングモデル≒「謙虚なコンサルティング」

 

 潜在クライアントと初めて接する時に、信頼しあって率直に話の出来る関係を築こうという意識を持って挑むことになる

⇒やってみようと思う事や対応が、手間のかかる診断や介入でなく、アクティヴ・ムーブ(次の迅速な一手)となるのである。(P40)

 

「人間関係とは何か。信頼する、率直であるとはどういうことか」(P64)

Level -1 ネガティブな敵対関係、不当な扱い

 例)基本的にお互いをまったく人間として扱わない状況(完全な従属関係など)

Level1   認め合うこと、礼儀、取引や専門職としての役割に基づく関係

 例)街で出会った見知らぬ人、医者や弁護士等他人を支援をする職業についている人

Level2  固有の存在として認知する(=謙虚なコンサルティングにおけるレベル⇒パーソナライゼーション)

 例)個人的に知るようになったが、親密というわけではない上司や部下、たまに会う友人

Level3  深い友情、愛情、親密さ

 例)強くポジティブな感情を伴う関係  (P69)

 

  組織に関する仕事では、レベル3の関係は避けた方が良い。なれ合いや身内びいき、えこひい━━仕事をする上では妨げになると考えられ、ビジネスの領域の場合、私たちの文化ではしばしば「腐敗」とレッテルを貼られるほどのえこひいき━━のすべて、あるいはいずれかを生み出してしまうからである。(P83)

 

 謙虚なコンサルティングの姿勢

 Commitment  力になりたいという積極的な気持ちが大事

 Caring                   クライアントに対する思いやり・・・・・出来るだけ早く個人的な話を始める事

 Curiosity              好奇心 「どのような問題がおきているのか?」(P133)

 

聴き方の3種類

 自己中心的に聞く

 内容に共感しながら聴く

 人に共感しながら聴く

最初にどう対応するかは、どのように聴くかによって決まる。(P136-P138)

 

診断的な問いかけ

 コンサルタントとクライアントの双方が、状況やクライアントについて、それまでよりほんの少しよく理解できるようになること

概念に関する質問

感情に関する質問

行動に関する質問 

循環的な質問、およびプロセスにフォーカスすること

 三つのタイプそれぞれを、ファミリーセラピスト(家族療法士)が循環的な質問と呼ぶ形で質問すると良い。循環的な質問をすると、組織の他の人たちがどのように考え、感じて行動していると思われるかをクライアントにじっくり考えてもらうことになる。(P142-144)

  

 パーソナライゼーションは、すればする程良いなどと決めつけない事、相互依存の関係が存在しない場合は、多くの関係がLevel1のままで極めてうまく行くのだ(P238)

 

「パーソナリゼーション」⇐CEOと自宅で話を聴く

 「具体的にどんなことがあるか、話して頂けますか」

↑例外なくまずこの質問をした方が良い

 「アダプティブ・ムーブ」 (適応した動き)((次の迅速な一手)につばげてゆく(P31)


クライアントとの間にこれまでにない個人的な関係が必要である=対等な関係

初めて言葉を交わす瞬間から、新たな対応の仕方が必要である。

困った時の依頼の場合

「あなたの考えを、もう少し詳しく話してください。」

「その企業内文化調査を実施したいのは、なぜですか?」

「解決しようとしているのは、どのような問題ですか?」

これまでとは違う「謙虚な姿勢」と「支援したい気持ち」や「好奇心」が必要である

「謙虚なコンサルティング」には、新しいタイプの聴くスキル対応するスキルが必要である。(P46)

 

2種類の共感力を伸ばす必要もあった

現況や問題について好奇心を持って傾聴する共感力である

    ・クライアントを本当に悩ませている問題が何かを見極めようとして、好奇心を持って傾聴する共感力である。(P48)

 

 ☆結局のところ、コンサルタントがこれまでにない革新的な対応をしなければ、

これまでにない複雑で厄介な問題を取り扱うのは難しいのである。(P51)

 

 参照)

 「謙虚なコンサルティング」 (エドガー・H・シャイン著 金井壽宏監訳 野津智子訳 2017年 英治出版)
(太字は参考の為に追加)

 プロセス・コンサルテーションとは、クライアントが学び方を学ぶように支援すること

 

プロセス・コンサルタントの特徴は、クライアントが自ら問題を解決し、学び方を学ぶことが出来るような関係を彼らとの間に築いてゆくことだ

 

 支援者、コンサルタント、コーチは機敏さと柔軟さ兼ね備えなくてはならない

なぜなら、どのような支援が必要になるかは前もってわからないからである。

さらに、人とグループに関する問題の多くは状況に応じて変わってゆく

 

シャインは、クライアントの支援には3つのモードがあることを示した。

①専門家モデル

クライアントが自分で実施できない方法や得られない情報を専門家から購入し、提供してもらうという支援

②医師━患者モデル

クライアントの現状を点検してもらう為に、診断して処方箋をだしてもらうという支援

③プロセス・コンサルテーション・モデル

クライアントが現状で起こっているプロセスに自ら気づき、どのように変えていくかを自ら計画して実行していく、その過程の支援

 (プロセス・コンサルテーション・モデルのモードから変革の取り組みを始める事の必要性をシャインは強調している。)

 

 プロセス・コンサルテーションの本質としての10の原則

  1. 常に援助的であること
    〖常にお役に立てるように努めること〗
    (Always try to be helpful)
  2. 常に現状を認識しておくこと
    〖現状の状況に常に留まること(そして、考動する事)〗
    (Always stay in touch with the current reality)
  3. (自身の)無知にアクセスすること
    〖自身の無知の領域を意識する事〗
    (Access your ignorance)
  4. 自分のすることはすべて介入である
    〖あなたの行う事はすべて介入となる〗
    (everything  you do is intervention)
  5. 問題も解決策も握っているのはクライアントである
    〖問題も解決策もクライアントが持っている〗
    (It is the client who owns the problem and solution)
  6. 流れに身を任せる
    〖その場の流れに乗りながら進める〗
    (Go with the flow)
  7. タイミングが(極めて)重要である
    (Timing is crucial)
  8. 対決的な介入で好機をうかがう
    (真っ向から対決する介入については、建設的オポチュニズムであること)
    〖対立的な状況の介入については、前向きな様子見に徹する事(対立の中に入りすぎない事)〗
    (Be constructively opportunistic  with confrontive interventions)
  9. 全てはデータの源泉である。誤りは避けられないが、そこから学ぶことが大切である
    〖すべてはデータである(データ=誤解によって生じた反応等)、誤りはいつも生じてしまうが、それは学びの為の一番大切なリソースとなる〗
    (Everything is data ; Errors will always occur and the prime source for learning)  
  10. 問題がある時には(疑わしき時)は、問題を共有する
    〖疑問があるときは、その問題を共有(し、確認)する〗
    (When is doubt, share the problem)

(P326-328 《参考*P82》)〖筆者による追記〗

 

◇対話と感受性訓練

両方の方法を結びつけ、同時にはっきりと区別するのは、”聴く”ことの特殊な要素を発展させることにより深く関係している。

コミュニケーションや人間関係に関するワークショップの大半で”積極的に”聴くことが強調されている。・・・・・・反対に対話では、最初のうちは自分の思いに耳を傾け、背後に潜む仮定を知ることに神経が集中している。つまり自分がいつ口を開いたら良いか、何を言えば良いかと言ったことが”自動的に”決まるようなそういった過程を知らなければならない。 (P275)

 

プロセス・コンサルテーションにとって課題として残ったままであるのは、そこで、対話の形に近づける為に会話をいかに管理するかという事である。 (P290)

 

読者が注意すべきことは、次の3つの基本的役割、つまり①専門的な情報提供、②”医者”という有利な立場からの診断と処方、③プロセス・コンサルテーションが、常に相互作用しているということである。 (P297)

   (⇒意識マトリックス理論によるこれらの考察内容はこちら

 

参考)

「プロセス ・コンサルテーション ~援助関係を築くこと~」

(エドガー・H・シャイン著 稲葉元吉 尾川丈一訳 2002年3月 白桃書房)


支援関係における7つの原則とコツ

  1. 与える側も受け入れる側も用意が出来ている時、効果的な支援が生じる
  2. 支援関係が公平なものだと見なされた時、効果的な支援が生まれる
  3. 支援者が適切な支援の役割を果たしている時、支援は効果的に行われる
  4. あなたの言動のすべてが、人間関係の将来を決定づける介入である
  5. 効果的な支援は純粋な問いかけとともに始まる
  6. 問題を抱えている当事者(オーナー)はクライアントである
  7. すべての答えを得ることは出来ない

参考)

「人を助けるとはどういうことか ~本当の「援助関係」をつくる7つの原則~

(エドガー・H・シャイン著 金井壽宏監訳 金井真弓訳 2009年8月 英治出版)


 私が、販売・購買・生産上の個々の経営問題に興味を持つとすれば、プロセス・コンサルタントとしてではなく、専門家に変身したことになる。いったん専門家になると、プロセス・コンサルタントとしてうまく動けなくなる。  (P183)

 

   コンサルタントが、(上の様な)質問に答える前に、いちばん留意すべき点は次の2点である。

(1)グループ(あるいは個人)が、本当に報告を理解し、それが目にののえる具体的な行動と結びつけられるまで答えないこと。

(2)グループ(あるいは個人)が、自分で解決しようと、積極的努力を始めるまで答えないこと。 (P203)

 

参考*)

職場ぐるみ訓練の進め方(エドガー・シャイン著 高橋達郎訳 昭和47年(1972年)1月 産業能率短期大学出版部 )



注)「診断型組織開発はプロセス・コンサルテーション型で進められている」(組織開発の探求 P.202注)とされていますが、ここでは「対話型組織開発 (その理論的系譜と実践 2018年7月 英治出版)」をもとに、社会構成主義のマインドセットとアプローチ法に注目し対話型組織開発の中においています。

 プロセス・コンサルテーションは、組織開発初期の1969年から提唱されていますが、1999年版頃より視点が変化してきたともされているようです。

 

参考)

「組織開発の探求 ~理論に学び、実践に活かす」

 (中原淳+中村和彦著 2018年10月  ダイアモンド社 P198~P202)


 最後に、シャイン先生のプロセス・コンサルテーションにおける3つのポイントを提示しておきます。クルト・レヴィンの流れを汲むこともあり、次のようになります。

  1. アクション・リサーチに限られる。
  2. (幅広い意味での)組織開発に限られる(人間関係を取り扱う)。
  3. なんらかの変化がおこる必要がある。