· 

M.P.フォレット  創造的経験


 SocialGoodキャリア®では、キャリアカウンセリング型組織開発を通じて、組織の改善と組織社会全体の改善を目指しています。そのもとになる社会構成主義の思想はM.P.フォレットの思想に見つける事ができます。M.P.フォレットは、ドラッガーに「経営学の預言者」と称されています。

M.P.フォレットとその「創造的経験」について、WEB情報から抜粋してみます。(元の論文へのリンクも張っています)


博士論文   M.P.フォレットの「経営管理」論をめぐって  ―「統合」を促す契機を探る
2019 年 1 月  滋賀大学大学院経済学研究科  経営リスクマネジメント専攻  氏  名 石橋 千佳子 」より

 

「 メアリー.P.フォレット(Mary Parker Follett, 1868-1933)は、20 世紀初頭にアメリカで活躍した政治学者であり、経営学者である。その主張の核心は、コンフリクトを一方の当事者による他方の当事者の抑圧(domination)や、双方が不満を残した妥協(compromise)により解決するのではなく、対話を通じて双方の状況認識を交織させながら「状況の法則」を見出すことにより両者が満足しうる統合(integration)に至ろうとするところにあった。
 ここに言われる「状況の法則」とは、当事者たちが包摂されている状況自体が指し示すところの、組織全体ないし状況全体とそれを構成する個々の成員がともに前進することのできる道を意味する。」

「そうした現代社会だけに、「統合」によってコンフリクトを乗り越える道を切り開こうとしたフォレットの主張は魅力的に響く。」

「 フォレットの「統合」論は、組織ないし全体状況とそれを構成する個々の成員の双方がともに前進を果たすことのできる「状況の法則」を探し求めようとする点でも魅力的である。」

「フォレットは、「統合」によってひとつのコンフリクトを乗りこえ新たな状況を切り開いたとしても、その新しい状況のなか
で新たなコンフリクトが生み出されてくることを認め、それをもやはり新たな「状況の法則」の発見を通じて乗り越えてゆくという、動態的過程を念頭に置いている。そもそも、フォレットは、観念的な究極的なゴールを判断基準に据えるより、行為することを重視し、イギリス経験論の系譜に立って、さしあたり理解できる範囲でのベターな選択を重ねてゆこうとするプラグマティズムを信奉した人であった。 」

「フォレット理論の特徴は、まず、個人、組織、社会の関係をすべてプロセスとみなすことにある。すなわち、個人が他者との相互作用を通して組織という社会過程をつくり、さらに組織と組織、個人と組織のそれぞれの相互作用の中で社会ができるというように、「個人―組織―社会」と連なる動態的プロセスとして三者の関係を捉えている。かつ、「相互作用」(interacting)、「統一化」(unify)、「創発」(emergence)の 3 つのカテゴリーをカギとする動態的プロセスとして捉えているのである16。
  すなわち、第一に、フォレットは、個人と個人、個人と全体の「相互作用」を「円環的反応」(circular response)と捉えている。個人 A と個人 B が相互作用しあうということは、A がB に影響を与えたら B はその影響を受けて以前とは違う B として A に影響を与える。B からの A に対する影響も同様に作用する。同時に、A は、B をとりまく関係にも影響を与える。そして、B はその影響を受けて、以前とは違う B として A および A をとりまく関係に影響を与える。B が A を取り巻く関係に与える影響の帰結もまた同様というわけである。こうして、個人は、意識していなくても他人の影響を受けており、個人の行為は、自身を含む「状況」を変化させていると言える。フォレットは、円環的反応という概念を使って、個人の行為が環境といかに関係づけられ、全体的に統一されていくかを示した。 (   米田・三戸邦訳、1792 年、273 頁。 )
  第二に、人々が相互作用を繰り返しながら全体状況を作っていく中では、当然人びとの欲求の対立(conflict)が生じるが、フォレットはコンフリクトを統一的全体の動態化の契機としてとらえる。そして、コンフリクトの建設的な解決によって、状況を進展させようと考えるのである。すなわち、フォレットは、コンフリクトの解決方法には、「支配(抑圧)」(domination)、「妥協」(compromise)、「統合」(integration)の3つがあると考える。「支配(抑圧)」では、相互作用は断絶するか、抑圧された側の反発を伏在させつつ、片方の欲求しか満たされない。「妥協」では、双方の欲求を抑えた相互作用が働き、双方の欲求は十分には満たされない。それらに対して「統合」は、双方の欲求を包括した新たな状況をつくり、そこで双方の欲求をともに満足させようとするものであり、フォレットは統合によりコンフリクトを解決していくべきだと考えた。さらに、フォレットは、統合の実現には「高度の知力、鋭い洞察力、相違に対する識別力および特にすぐれた創意工夫力」が必要であるとして、状況の中の統合に関わる個人に期待している。こうして、第二の「統一体化」は実現される。
  第三の「創発」は、全体状況が展開するために統合による新たな価値が生まれることを言う。フォレットは人々の相互作用を「円環反応」という概念で表し、その過程で生じるコンフリクトの解決には「統合」というプロセスがありうることを示し、そのプロセスを「統一体化」と言い、そこから新たな価値が「創発」することを展望したのである。 」

 「フォレットの理論の特徴を、組織論としてとらえると、三井説に倣えば、それは「活動のネットワーク」として、4つの側面を含むこととなる。すなわち、「行動の交織」、「経験の交織」、「機能の交織」、「責任の交織」である。そして、それらが絡み合いながら、統合的に統一されていくプロセスがフォレットのいう「組織化」ということになる。 まず、「行動の交織」は、個人が、円環反応を通じて他者と関係づけられ、同時にその関係とも相互作用を行って、統一的全体を作っていくことを表す。また、「経験の交織」は、社会状況の判断は個々人の経験があって初めてなされるという認識を前提として、個人の経験が織り合わされば個人的な経験の幅が広がり、個人の経験が新たな段階に進み、個人も成長していくことを表現している。成長しつつある個人が相互作用して状況も進展していくというわけである。さらに、「機能の交織」というのは、個人が自らの職務を認識し、自由裁量を通じて遂行していく、そのプロセスの中で職務は形作られ遂行されるということを意味している。最後に「責任の交織」であるが、個人は職務を遂行すれば責任を果たすのではなく、自分の行動の他者への影響と、その結果状況を変化させることについての責任までを視野に置いている。 (  同上、64 頁。) 
以上の4つの側面が絡み合って、組織化のプロセスとなっている。また、この組織化のプロセスでは、「相互作用」、「統一体化」、「創発」が同時進行していると考えられている。

 「フォレットにとって、対象世界の認識はその世界に対するわれわれの「さまざまな応答、つまり活動を通じて」なされるものであって、活動から切り離された事実認識などありえなかったということである。さらに、第二の論点を加味すれば、フォレットにおいて「状況」とは、人びとの相互作用により、共通意思が存在する場であり、個人はそれを自覚しつつ、自らコントロールして社会的機能を果たし、同時に状況全体もコントロールされていくと考えられていたということになる。フォレットは社会を、主体と客体、主観と客観が同時に内在する「状況」と捉え、さらにそこでは各主体は部分の相互関係を認識し、常に全体を意識していると捉えていたというわけである。 」


 「M. P. フォレットの創造的経験と統合の過程 ― Creative Experience を中心として― 2018年3月
北九州市立大学大学院社会システム研究科  博士(学術)学位請求論文  西村 香織」より、 
(「創造的経験 M. P. フォレット著 三戸 公 監訳/齋藤貞之・西村香織・山下 剛訳 文眞堂」も出版されています。)

 

「M. P. フォレットが著書Creative Experience(1924) の中で明らかにした創造的経験とそれによって生じる統合の過程について考察した論文である。フォレットは、様々なコンフリクトに対して、個人が組織や社会との関係性の中で機能しながら成長し、組織や
社会も前進させていくことができる統合の過程をもって対応することを提唱した。そして、統合は創造的経験によって実現するとの考えを示している。」

「経験は、他者との関係によって織り続けられていくものであり、この意味において、個人と個人、個人と組織・社会を結びつけていく核心にある。統合を目指して共に考え、共に議論し、共につくり出そうとする人々の経験の交織によって、人々のエネルギーの解放や力の喚起が生じ、経験は創造的なものとなる。それは、人々を成長させ、同時に関係性を充実させて、より高いレベルの状況を創り出す。これが統合の実現であり、共に創り出していくことで、人々は満足に至り、人々の多様性も豊かになる。。この人々のエネルギーの解放や力の喚起を、フォレットは創造的経験の本質として捉える。」

「現代組織のマネジメントが依然として二項対立や支配の関係になっており、思考や価値観が固定化に陥っていることを問題として示した。そして、相互作用から経験を創造的にし、新たな考えや価値を創造していくことを説く統合の考えが、マネジメントが陥っている問題をはじめ現代の組織や社会において必要とされることを明らかにした。最後に、フォレットが課題として私たちに示した経験の実践に踏み出していくこと こそが、創造的経験に基づく統合の可能性を切り拓くことを示している。」

「 コンフリクトの問題に対して、それを解決することに向けて、 研究上ではどのような考え方があったのであろうか。  経営学においてすぐに思い浮かぶのは、チェスター・I・バーナード(Barnard, C. I.) の有効性(effectiveness)と能率(efficiency)の考えである。バーナードは、人間と組織における、目的達成の基準を有効性と定義し、満足の基準を能率と定義した。そして、「組織とそれに外的な全体状況との間の均衡は、組織における有効性と能率に関するバランスである」との考えを示しているのである。バーナードが、人間や組織における目的を達成することと満足を得ることとの間のコンフリクトに、有効性と能率の考えを論じていったのは、 The Functions of the Executive , 1938(『経営者の役割』)においてである。だが、 このバーナードの主著に先立つ 1924 年に、まさにコンフリクトの問題自体をテーマとして取り上げ、コンフリクトを活かして人々の成長を実現しつつ組織等の全体を前進させて いく新たな結びつき方を探究していった研究があった。それが、メアリー・P・フォレッ ト(Follett, M.P.)の Creative Experience(創造的経験) である。  」

「人間はその存在自体が、すでに、さまざまな関係性の中にあるのである。」

「では、なぜ、統合においては、新しい考えや新しい価値が生み出されるのであろうか。フォレットが著したCreative Experience は、その全体がまさにそれを明らかにしようとするものである。フォレットは、その問いに対して、新しい考えや新しい価値が生み出されるのは、統合の社会過程においては、人々がそれぞれに相手のエネルギーを解放し、 力を引き出していく「喚起(evocation)」が生じているからであると答える。そして、このエネルギーの解放、力を引き出していく喚起が生じるとは、経験が創造的なものになっていること、つまり創造的経験となっていることであるという。」

「フォレットの Creative Experience における中心も、共に新たな考えや新たな価値、新たな状況を創り出していく創造的経験にある。この創造性は、後の「統制の心理学」の中では「創発(emergence)」として表現され、フォレットは、統合による社会過程を「相互作用(interacting)」、「統一化(unifying)」、そして「創発」の三つの側面から捉えられるとしている。つまり、相互作用が行われ、それが積み重なり相互に浸透して統合に向かおうとするとき、それぞれの相異は統一化され、もっと広い視野に立つ価値が生じてくると捉えるのである。そして、このときに、関係づけにある個々人の人間的な向上があり、関係性が充実していくと説いている。」

「フォレットが創造的経験(Creative Experience) を中心として、提唱した考え方は、むしろ単純明快である。すなわち、私たちは科学的・客観的であろうとして、限定した範囲や限定した条件の下で証明された考えや原理・原則、または普遍化された概念や仕組みを求め、それに頼ろうとしてきた。しかし、人が他の人と共に生きていこうとするとき、協働したり、組織や社会をつくったりしていくときに、真実と言える法則はただ一つである。それは、私たちが相互に作用し合っていること、その相互作用において影響を与え合い受け合って、常に変化していること、私たちはそのような活動の関係づけの中にあるということである。すなわち、私たちは経験の
交織の活動にある。そうであるならば、私たちが考え取り組まなければならないのは、この経験の交織を活かしていくことである。経験の交織を活かして、新しい考え、新しい価値、新しい状況を創り出していくことである。」

 「次の三点を課題として挙げたい。まず一点目は、integrity【誠実さ・高潔さ】 や percept【知覚する】 のような理論のキーワードの把握がまだ十分ではないということである。そのようなキーワードを、時代背景や思想背景と共に理解していくことを通して、フォレットの考えをさらに深く理解していくことが必要になると考えられる。二点目は、フォレットは経験を創造的にしていくことの実践として、参加観察者であることや経験に関する証会に臨むことを提唱しているが、経験を創造的にしていくという考えを現代の組織や社会の中でどのように実践に結び付けていけばよいのかということである。これには、経験を創造的にしていくことを可能にする能力、すなわち統合を目指すことができる力は何かを考え、それを養っていく教育について考えていくことが重要になる。この二点目と結びつくこととして、考えを固定化することなく活動していくことのできる文化や風土を醸成していくことが三点目の課題として挙げられる。これらの課題は、どれも多くの労力を必要とするものであるが、経験に関する考察は、これからの組織や社会、そして人々の未来を考えていく上で、不可欠のものである。フォレットは、すでにこのことを見通していたとも言うことができ る。
フォレットは、次のように述べている。「経験という石を踏んづけて自らの足が血だらけになるとしても」、私たちは、経験の実践に踏み出していかなければならない。なぜならば、 「経験がもたらす贈り物は本物(real)だからである」。つまり、本物の贈り物を手にすることができるかどうかは、私たち自身の経験の実践に臨んでいく覚悟に掛かっていると 言えるのである。」 


 上記のように、M.P.フォレットの思想は、後の時代になって出てくる社会構成主義やそれに基づいた「対話型組織開発」に含まれる概念をすでに包含していたようにも思います。「経験の交織」においては、その「統合」に向けてキャリアカウンセリングが有用だと考えれます。また、上記に記述されている「実践の課題」とされている点については、「経験代謝のメカニズム」に基づいた「キャリアカウンセリング型組織開発」によって、課題が解決されることを目指しています。

 「意識マトリックスマップ理論」を使って、上記の構造を表現してみると事もできます。

 フォレットの「創造的経験」の実現は、組織において「経験代謝のメカニズム」を実践することがひとつの可能性となります。

 また、M.P.フォレットは、ドラッガーに「マネジメントの預言者」とも称されていますが、社会構成主義に基づくキャリアコンサルティングが、「マネジメントの預言の実践者」となる可能性があると考えています。


創造的経験  M.P.フォレット著  監訳者 三戸 公 (2017年7月 (株)文眞堂)より

 

 ☆この本の内容は、基本的には政治学についてです。その内容は、専門家にゆだねる事への疑問であったり、個々の「経験の交錯」こそ民主主義の基本であると説いていたり、読んでいると100年前に書かれた「社会構成主義」に関する著作かと思えるほどでした。100年前の著作ではありますが、そのくらい先進性が含まれている内容だと思います。その”関係性の重要性”を説く先進性ゆえに、1930~40年代のモダン(本質主義)が全盛な時代になると、一度は完全に忘れられてしまったと、ドラッガーは記述しています。

(参照:序説 メアリー・パーカー・フォレット:管理の予言者 ピーター・F・ドラッカー著より

                         監訳者 三戸 公・坂井 正廣 1999年5月 (株)文眞堂) 

 

 「創造的経験」の中では、主題となる「経験」そのものについて、章を割いて、定義されたり、まとめられている訳ではありません。まずは、この著書の中で述べられている「経験」というものに対して、どのように記述されているのかを抜粋して確認します。

 

 ここでいう経験(experience)という言葉は、専門家(expert)という言葉と同じ語根に由来している。

知識は、生まれながらにして人間に備わっているわけではないし、・・・・・(P30)

【専門家の知識を含め、知識は人々の経験を通じて獲得される】

 ここでいう生き生きとした実際の経験とは、自分自身の経験と他の人たちの経験がプラスされてゆくことである。(P40)

 我々が人間関係、社会的状況を観察し分析する時には、我々が今、円環的反応とか円環的行動と呼んでいるものを毎日みることになる。(P70)

 あらゆるレベルの経験は、相互の関係づけと捉えられるということである。(P82)

 我々は、経験を諸力の相互作用として捉える。つまり、経験をその瞬間瞬間にいきいきと関係づけてゆくことを通じて、新たな活動に導いていく関係づけの活動(the activity of relating)として捉えるのである。(P91)

 経験とは力の源である。ここでは、意思や目的が生み出される。更に最も重要な事として、ここでは今言った意思や目的を評価する基準も生まれるのである。(P95)

 (現代心理学の特徴のひとつは)経験は常にひとつの複合物だということ、経験は常にひとつのまとまりだという事である。

(感覚・観念・感情からなるものとして、分けられるものではない)(P113)

 経験を、何かを検証する過程 (verifying process) としてよりむしろ、創造してゆく過程とみなすことが可能となる。

 経験とは、そこから目的と意思、思考と理想が生み出されてゆく力の源、つまり発電所のようなものである。(P141)

 あなたが経験の一部となることなくして、経験を知る事は出来ないのである。(P142)

 私が経てきたあらゆる経験、つまりは、私の人生という織物に織り込まれてきたものを、私は新たな経験に捧げる必要がある。・・・・・・我々が手にするものは、過去の経験と同等にはならないであろう。(P144)

 生きる事のあらゆる一つ一つが経験の部分を成していることが理解される。・・・・・・・・経験はひとまとまりのものである。(P155)

 自身の利益の評価は、事を行ってゆくに従って変わってゆく。それぞれの価値の評価は、人々の行動を交錯することからもたらされる。価値は「結果としても生じるもの」である。経験がすべての判断の基準を作り出すのである。(P178)

 我々は第3章で、経験とは、自己生成し、自己充足し、あらゆるものを包含し続けてゆく活動であるという事を知った。(P191)

 

以上にように、「創造的経験」の中では、「経験」を自己を織りなし、諸力の相互作用であり、ひとまとまりのもので、そこから目的と意思、思想と理想が生み出されてゆく力の源であると捉えられている。これは「経験代謝」における「経験」が自己概念をおりなし、意味の実現に向けて行動を形作るものであるということと、共通をしている。「経験代謝」の中では、「経験」を自己をみつめるものととしており、「創造的経経験」における「経験」の定義は、「経験代謝」の見識を高める考え方、また幅広く活用する為の考え方として、大変参考になります。


 上記の抜粋とも重なりますが、主要なキーワードについてまとめておきます。

 

「経験」

 経験こそ、あらゆる物事の基準を創造するものであるとしている。価値とは、我々の経験に根ざし、相互作用を通じて新たに生み出され、行為によって変化させられていくものでると認識している。こうした価値が常に作り出され、生み出されるプロセスを「創発」という言葉に含意して、明確に示したと考えられる。

 

「価値」

 価値とは、「実現される出来事(あるいはその特性)」を示しているものであって、事実を離れての価値の達成はありえない。

 (社会ネットワーキング論の源流 第4章 フォレット理論の方法と主要概念 P103・P104)

「創発(emergence)」

 進歩的統合(progressive integration)という言葉を用いて、相互作用から「何か新しいもの」(価値(出来事))が生まれる事を表そうとしている。

 (社会ネットワーキング論の源流 第4章 フォレット理論の方法と主要概念 P102)

 

「状況の法則」

 問題は、ある状況下で発生をしており、状況を変化させることで問題解決の糸口がみつかる。

 (別の視点からは、システムは上位システム(環境・状況)に適応をする必要がある)

 

「円環的反応」

 フォレットは相互作用を「刺激━反応」のような作用Aに対する作用Bというように、直線的には理解しなかった。BがAに反作用し、それに対してAが作用する時、Aは「Aが最初に行ったA自身の行為」によって影響づけられたBの行為に反応していることになる。これを繰り返すうちに、互いの単独の行為は、継続的に累積されて全体状況を形成(統合的行動)し、更にその「全体状況」に対しても相互作用していくという弧を描くような「円環的」な関係として捉えた。

 全体状況は、一定の到達点ではなく、「プロセス(過程)」と捉えたところにフォレットの特徴がある。

 

「フォレットの思想形成の背景」

 システム概念(一般システム理論)と弁証法(ヘーゲル)が背景にある。

 「弁証法」

 弁証法は、物事を空間的に切り離して見るのではなく、空間的なつながり、時間的な流れの中で物事をみる。

 

(出典のない項目は、2013年 春のエキストラ講義にて)


 このフォレットの思想の「状況」という概念を社会構成主義をベースとした「ナラティブセラピー」や「ブリーフセラピー」における人々の「認知」として捉えてみると、共通した考え方でもあるように感じられ大変興味深く感じられます。

  また、フォレット、バーナード、ドラッカー、シャインと続く経営組織論を社会構成主義の視点からも捉える事もできます。




「創造的経験」におけるキーワード Ⅱ

 

 今日、もっとも必要とされているのは、人間の相互関係  (human relations)に関する洞察力に富む、分析的で客観的な研究である(p1)

 

・創造的経験(Creative Experience)

 遠い昔からの深遠な哲学によって我々にもたらされた創造的経験の理論は、今や、ありがたいことに様々な領域における近年の研究によって強化され、個人は「超越すること」なく創造することが出来るという事を示してくれている。個人が体現し表明するのは、力(power)であり、天地万物・森羅万象の中から生まれ出る力である。この意味での力を体現する結果として、個人は、個人自らその創造を促進し続けていく、例の強さを体現することになる。それ【体現する力】は、個人の中に存在し、個人によって存在し、個人を通じて存在しているものなのであって、いつでも世の中に応答していく為の準備が整っている。だからこそ、人生は拡がり深まってゆく。個人は充足し同時に、より大きな充足が可能な存在となるのである。(P122)

 

・エキスパート(expert)

「本章の間接的な要約として、次の事を述べておきたい。エキスパート(expert=専門家)という言葉は、必ずしも特権階級による情報収集のことを意味するのではない。そうではなく、エキスパートという言葉は、むしろ我々の誰もが獲得できる精神態度を表した

 言葉なのである。私は、本章を通じてこうした意味でエキスパートという言葉が理解できるようになればと願っている。」(p39)

 

・状況(situation)

 状況とは、その内容について報告がなされる時点では、すでにその情況そのものが変化してしまっているのである。状況を作り上げている一定の諸要因は常に新たな状態に発展しうることが敏感に感じとらなければならない。そうすれば、我々は状況の静止状態を示す一画面(a picture)としての報告書ではなく、状況が発展する過程を示す報告書を手に入れる事が出来る。(P21)

 その情況に対して何が事実であるかを決定するには、明確な判断力が必要であり、総合的な洞察力が求められるのである。(P24)

 民衆は、彼らが状況に反応することによって、自らが反応しようとしている状況そのものを新たに創り出し、発展させることを手助けしているのである。(P39)

 (経済学のように)ファンクション(機能・関数)という語の定義において、常に心に留めておくべきことは、状況は発展し続けてゆくのだということである。(P84)

 あなたがある状況に参加すれば、その情況はあなたが加わったものとなる。こうなると、あなたは、あなた自身が加わった状況、すなわち、状況とあなた自身の関係性に反応していることになるのである。(P141)

 すなわち、彼らが、周囲の状況が同じであるという事を特定の会見から判断し、二つの状況が絶対に同じではありえないことを忘れ、過去の出来事から得てきたことを、そのまま現在の出来事に適用しようとする場合には、人生を台無しにすることになる。(p144)

 その諸々原理(仮定)は、・・・・捨て去ることが出来ない。それらは、過程に投入され、それらによって新たな原理の生成に寄与する。私が好む言い方で述べれば、新しい状況の生成に寄与するのである。(P146)

 人間同士の状況の中でテストをすることは、自然科学のように実験室の中でテストすることとは、決して同じではあり得ない。(P148)

 ここで状況に対応するとは、異なる状況の創出を促進するという事である。(P150)

 状況とは、その状況が有する可能性を示すのに時間がかかるものであるという考えを示す人々のやり取りを把握する枠組みを手にしていないのである。この枠組みを持たないのは、我々が生きることは仮定なのだということを理解していない為である。この場合、我々は静観的な状況を仮定してしまっている。【なんとなく分かる様な感じですが、難解です。「その状況が有する可能性を示す人々のやり取りを把握するのに、時間がかかるものであるという枠組みを手にしていないのである」の方がちょっと判り易いでしょうか。】(P158)

 今日の我々の世界が抱える問題を何らかの意味で本当に解決しようと思えば、・・・・すなわち、それは、状況に対応する為の道を切り開く方法であり、ここで状況に対応するとは、異なる状況の創出を促進するという事である。(P160)

 我々は、まさにその状況の中にあって、状況から生じてくる法則 (the law) を見出だすことを望んでいるのに、それにも関わらず、我々はいまだに法 (law) によって導かれているからである。(P161)

 

・全体状況(total situation)

 事実とは全体状況(total situation)として理解されなければならない。感情や信念、理想などのすべてがその中に入り込んだ全体状況として理解されなければならない。

⇔警告⇒その報告書はある状況を形成している外面的な骨組みにすぎないものが、事実を構成しているという考えのもとに書かれていたのである。(P25)

 現在の心理学は、反応の取り扱いにおいて「全体状況」を強調する。この表現は巧みな表現であり、行動過程の構成要素として外部の客体あるいは状況が重要であることを示すものである。

 この公式は行動を環境の変数・・・(P66)

 我々は、状況が進化し続けていくということを考慮に入れることなく、全体状況を理解することは出来ない。そして、状況が変化する時、我々が手にしているのは、古い事実の下に生じた新たな変化ではなく、新たな事実そのものを手にしているのである。(P77)

  刺激となるのは全体状況であり、全体行動は、その全体状況の関数である。(p89)

 我々は、行動のあらゆるケースを全体として観察しなければならない。・・・・次の第5章では、ゲシュタルトの概念を取り上げるだろう。これは、全体性の概念 (a concept of wholes)であり、・・・・調整の概念の枠組みにおいて全体環境 (total environment)という概念がいかに重要かという事と結びつけて考察されるであろう。

 人間の意志や目的、あるいは集団の意思や目的は、その人間や集団の活動の中に見出されるべきであるということであり、そして、そうした活動は、その人を取巻く環境の何らかの側面の不断の関連付けにの中に存在し、あるいは、そうした不断の関連付けの組み合わせだという事である。(P90)

 我々が注視しているのは、形成し続けていく全体なのである。

 「心理的状況」は、常に全体状況である。(P111)

 ・・・・諸活動は、・・・・その社会的環境を構成している。・・・・変化していく諸活動とつながりを持っている。こうした相互作用こそが、近年の心理学に言う「全体状況」なのである。

 全体状況は決して全体画ではない。(P114)

 社会状況においては、二つの過程がいつでも同時進行をしているということである。・・・・人と人との調整過程と人と状況の調整過程である。

 我々は、社会的行動を観察する際には、全体環境と全体反応を考慮に入れる必要が合うという事がわかるのである。(P131)

 法則はあくまでも状況から導き出される。しかも、ここで言う状況とは、「客観的状況」ではなく、「全体状況」である。(p161)

 現在の不健全さを生じせしめた経験は、過去の全体状況であったはずである。そこには、事故と周囲の状況の不健全な相互作用が存在してきたのである。(P163)

 旧来の心理学と我々が手にする現在の心理学を著しく区別するものは、「全体状況」に行動の目標を包含するかどうかである。(p213)

 【「全体状況」とは、当時の全体性心理学やゲシュタルト心理学からの概念のように思われます。】

 

・コンフリクト (conflict)

 我々が求めているのは、コンフリクト(conflict=対立)が持つプラスの価値なのである。・・・・この内容は、古い意味での調整・調節よりもはるかに豊かな意味を持っている。(P6)

 最初にやるべきは、自らの主張が事実であることの妥当性を証明することである。この方法を取れば、コンフリクトの解決の手助けになるとともに、人を育てることになるであろう、(p35)

 私には、個人的利益の統合という言い回しが、コンフリクトのもたらしうる結果、つまりコンフリクトがどのような結果をもたらしうるのかということと、コンフリクトの予測、つまり、今後、コンフリクトがどのように生じてくるかということの両者に言及するものであり、価値の尺度と価値を向上させることの両者に言及するものであるように思える。(P59)

 

・支配 (domination)(抑圧 (suppression))

  支配については、すでに多くの事が語られてきた。もし、我々が支配以上の何か別のやり方を学ぶことが出来ないのであれば、

 我々は常にだれかによって支配されることになるだろう。(p164)

 妥協とは、抑圧(supression)だからである。実際に我々は個人の抑圧された行動が、後にその個人の破滅の要因になる事を

 見せつけられてきた。同じ様に、政治上あるいは労働の争議においても、妥協の下に抑圧されてきたものが再燃し、

 より悲惨な結果をみたらすのを何度も何度も見かける。(P171)

 

・妥協 (compromise)

 妥協という考え方は、新たな価値は生み出さないという等価 (equivalents)の考え方である。(P2)

 妥協もまた、一時的で無益なものである。それは通常、単に問題を先送りするに過ぎない。(P164)

 妥協を支持する人は誰でも、個人であること (individual) を捨てることになる。

 

・統合(integrate)

 調整・調節という考え方は、我々が今日手にしたばかりの用語によって既に拡張され発展させられてきた。

 すなわち統合 (integration) という用語がそれである。統合というこの表現は、幅広い意味合いを含んでおり、

 この意味内容は本書において論じられている。(P6)

 自分自身の経験と他の人たちの経験がプラスされていくことである。・・・・・・・・いかにして経験と経験を結びつけ、統合していくかを学ぶことである。(P40)

 

・統合的行動(integrative behavior, integrated behavior)

  社会科学者が探しているものもまた、統合的行動 (integrated behavior)の「その時々の時点における」目的である。(p94)

 統合的行動は円環的行動を意味し、その円環的行動は、経験の連続性を含意している。(p115)

 

 

・創造(create)

 労働者災害補償法の場合には、損失を分配する以上のことをしたのであり、損失を食い止めたのである。これは創造である。(P56)

 ここで言う統合とは、創造的原理 (the creative principle) としての統合である。(P64)

 創造は、常に具体的な活動を通してなされる。

 我々は、創造し続けていくという過程を通して検証している。(P151)

 ドイツは、部分的には自らが反応しているものを創造しているのである。(p157)

 

 ☆円環的(circular)

 ・円環的行動(cirecular behavior)

 円環的行動あるいは統合的行動という理論は、前進する経験 (a progressive experience) を示す理論であり、

 個人の成長的発展と社会の成長的発展とが両立する道へと導く理論なのである。(P7)

 円環的行動を通じてのみ部分への全体簿影響が存在するのである。(P109-110)いみし 手に入れている。それは我々が心理的連続性(psychological continuity)と呼ぶ概念である統合的行動は円環的行動を意味し、その円環的行動は経験の連続性を含意している。この経験の連続性は、重要な心理学的な概念である。(P114-115)

 全体環境とは、環境の数多くの要素の中でも、円環的行動という点で感知可能な範囲内にあるものである。(P117)

 機能的代表理論は、円環的行動の理論を必要すると私は思う。円環的行動の理論は、唯一可能で存在しうる「全体」に対して、部分がどのように関係してくれるかを説明してくれるのである。(P251)

 

 ・円環的反射(circular  reflex)

 政治過程について述べる際に、円環的反射にもう一度触れたいからである。観察すればこの法則が人間の生物学的側面、人間の人格的側面、そして人間の相互作用によって生じる社会というそれぞれのレベルに作用していることは明らかである。(P68)

 あなたがある状況に参加すれば、その状況はあなたが加わったものとなる。こうなるとあなたは、あなた自身が加わった状況、すなわち、状況とあなた自身の関係性に反応していることになるのである。生理学的な円環的反射においては、刺激の活動と筋肉の活動とを別々のものとして比較する事は出来ない。なぜならば、筋肉の活動には中枢へとさかのぼってゆく瞬時の動きがあり、その活動を通して、筋肉の活動はその活動を引き起こしている刺激に含みこまれてゆくからである。同様に社会的状況においても、あなたが持ち込むものとその場で見つけたものとを別々のものとして比較する事は出来ない。この両者は、すでにお互いに影響し合っているからである。(P142)

 円環的反応においては、単なる刺激ではなく、単なる反応でないという事が重要である。関連づけの中にある刺激、関連づけの中にある反応だという事が重要なのである。私はそれを関係自体の活動と呼んでいる。「反射的円環の理論に従えば、反射的反応は一つの関数(関係し続けてゆくこと)[a function (functioning)]であり、円環的反射は、刺激の知覚を実現して改変してゆくのである」。

 社会的レベルでは、自己と周囲の状況、思考と具体的な経験は常に交錯している。比較することではなく、この交錯するという事こそが、生きていく過程(the life-process)である。我々はいまや、その時その時の反応を通じて創造をしていく過程として、生きてゆく過程を理解する。(P143)

 

 ・円環的反応(circular response)

 第3章 近年の心理学から見た経験:円環的反応(P64)

 我々が人間関係、社会的状況を観察し分節する時には我々が今、円環的反応とか円環的行動と呼んでいるものを毎日みることになる。(P70)

 円環的反応を通じて、4我々は常に互いを創造している。これはあまりにも明白なので触れる必要が無いようにも見える。(P71)

 ここには豊かな真理がある。つまり反応とは常に関係性に対するものだという事である。(P72)

 行動は環境の関数ではなく、行動と環境の関係づけの関数であるという事を理解し受け入れるならばの話である。

 彼の(ホルトの)円環的反応の取り扱いは、その考え方を明確に示している。(P79)

 全体と部分の関係性は、円環的反応の関係にあるからである。ゲシュタルト理論の研究者・・・(P108)

 部分に対する全体の関係性は、現代の多くの政治的諸問題の核心である。

 連邦主義は、円環的反応の理論とゲシュタルト理論の体現である。(P118)

 円環的反応は、人生の最も深い真理に対する心理学的な用語である。(P122)

 円環的反応の理論が調整・適応に関する我々の概念を変えつつあるとすれば、ゲシュタルト理論もまたこの調整・適応の概念に何らかの影響を及ぼすだろう。というのは、このゲシュタルト理論も、あるものが別の「外部のものからの作用を受けて行動する」という発想の放棄を促すに違いないと思うからである。(P132)

 円環的反応の心理学と、進化し続けていくという状況という考え方を、専門家の事実取集という第一章において私が述べた事と結び付けてみたいと思う。・・・・継続的統合は、社会的過程の非常に重要な一部分なのである。(P155)

 これらの3つは共に結びついている。すなわち、ひとつにまとめること(unifying)、統制すること(controling)、維持すること(susutaning)は一つのものなのである。我々が実際の権力について語っている時はいつでも、円環的反応によって生み出された七以下について、いやむしろ、円環的反応によって生み出されつつあるものについて語っているのである。(P192)

 法的な概念と経験、両者は共に結びつけられている。ここにおいて我々は再び、第Ⅰ部で述べられたあの円環的反応の例を手にすることになる。(P278)

 我々は、創造的な経験の基礎は円環的反応であるということを見出だしてきた。(P294)

 

・法則(the law)

 その理由とは、我々はまさにその状況の中にあって、状況から生じてくる法則(the law)を見出だすことを望んでいるのに、それにも関わらず、我々はまだ、未だに法(law)によって導かれているからである。(P161)

 

・目的(purpose)

 法秩序は、諸々の目的の統合を促進することによって、より大きな目的の創出を促進することになる。(P61)

 私が、目的(purpose)とは創造的な活動の直接の目的ではなく、その構成要素だと語ってきたことと非常に密接に関わっている(P226)

 機能とは、結合体が現在なしつつあることである。機能こそが事実上の目的である。活動に際して進められる一歩は、全てが目的における一歩である(P250)

 目的はいつも、未来と関連している。「目的は未来の出来事についての考えである。意志は、そうした未来の出来事についての考え方を実現しようとするものである。・・・・目的とは活動の一側面なのである。(P267)

 

(参照)

創造的経験  M.P.フォレット著  監訳者 三戸 公 (2017年7月 (株)文眞堂)