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意識マトリックス理論(本質主義と社会構成主義の視点)


 「経験代謝のメカニズム(傾聴とリフレクション《反映》)」は、キャリアコンサルティングだけでなく、ここまでで示したようにマーケティングや営業活動、組織開発等で幅広く活用することが出来ます。この要因は、現代の組織社会の中で「本質主義的な思考」と「社会構成主義的な思考」が併存して傾向が強くなっているからだと考えています。特に近代は「本質主義的な思考」をもとに進められ、勉学や受験活動において身に本質主義的な捉え方が通常に沁みついていますが、昨今はポストモダンへの以降に伴って「社会構成主義的な思考」の重要性が増してきたからだと思われます。

 コンサルティング等における本質主義的な関りとは、相手を傾聴をしているつもりでもクライアントの中に「解決の答えがある」とか、周囲との関係性において解決に結びつく「答えがある」と仮定して話を進めてゆくとです。一方で社会構成主義的な関りとは、クライアント自身や周囲との関わりにもともと根本的な課題などは存在せず、クライアントの自身の認知・発言や周囲との対話によって課題(軋轢)という形が発生していると捉えることになります。

 但し、本質主義と社会構成主義は併存していると捉えていますので、クライアントが特定の時点での本質主義的な課題解決を求めていることが多いこともあり、下記の図のようにそれぞれを意識しながら、二つの関りをうまく組み合わせてゆくことが大切になってきています。

 この図は、意識マトリックス理論(キャリアコンサルティング②)と共通する部分が多いですが、我々が学校教育で受けてきたモダンな本質主義的な関りと現在進行中のポストモダンにおける社会構成主義的な関りを枠組みとして示してみたものです。

 

 「本質主義」は、理論的原因究明・課題解決に意識が向いていますが、まだ理論的に解決できていない未解決の社会の課題については十分に認識が出来ていません。一方、社会構成主義は「対話」に意識が向いていて、対話により社会課題が構成されます。但し、本質主義と同様に対話による社会課題が構成がされていない領域(無意識の領域)もあります。 

①「それぞれが意識出来ている社会課題」領域(C/C領域)

  1. ここでは双方が意識出来ていますので、理論的な単純な方策により解決が可能です。
  2. 「社会構成主義的に把握された課題」を「本質主義的な理論」解決が出来る領域です。実際にはこのような形で解決されることも多いと考えられます。
  3. 一方で、「社会構成主義的に把握された課題」を「本質主義的な理論」で解決できない場合等は、社会構成主義的な立場から「本質主義的な理論」な理論や本質主義自体への信頼感が損なわれます。
    ここではそれぞれの立場からのコンフリクト(軋轢)が発生する領域です。ここでは双方に対する批判の感情が生まれてしまいます。
  4. ここでのコンフリクト(軋轢)を解消する為には、それぞれの立場を理解し前向きに認知する必要があります。これは、C/S領域やS/C領域にて、「統合」という形で解消がされます。

②「新たな方策による課題解決」領域(S/C領域)

  1. 本質主義的な立場から理論的な課題解決の目途はたっていますが、その課題自体が社会的に構成されていない為、課題解決に進めないか、課題が解決されているという認識が社会的に構成されません。
  2. ここでの本質主義的な課題解決が社会的に構成をされる為には、一旦、課題が社会的に構成されてはいるが、本質主義的な理論的解決が実現をしていない「未解決の課題把握の領域」(C/S領域)を経由する必要があります。
     これにより、二つの立場が「統合」され、双方から違和感のない解決を図ることが出来ます。
     

③「未解決の課題把握」領域(C/S領域)

  1. 社会的に課題が構成されていますが、本質主義的な立場からの理論的な課題解決が提示されていない領域です。
  2. 社会的な構成の変化により課題が消えてしまうこともありますが、環境破壊への対応など本質主義的な課題が構築された場合には、本質主義的な課題解決が必要となりますが、本質主義的な課題解決策はまだ見つかっていない領域です。
  3. この領域での本質主義的な課題解決を実現するには、本質主義的な立場から対話に耳を傾け(傾聴し)、社会的に構成されている課題を認識する必要があります。この認識が出来るとS/C領域における既存の理論での解決を提案したり、S/S領域にて新たな理論的解決を「創発」として実現できることになります。

④「新パラダイム(新たな構成)による解決」領域(S/S領域)

  1. ここでは、これまで社会的に構成されていなかった課題を新たな本質主義的な新発見による解決が期待できる領域です。
  2. この領域に到達する為には、「未解決の課題把握の領域」(C/S領域)にての新発見の気づきがあるか、「未解決の課題把握の領域」(C/S領域)から「新たな方策による課題解決」(S/C領域)に展開し、既存の理論的解決を図る中で新たな発見があり、「新パラダイム(新たな構成)による解決」(S/S領域)に展開される場合になります。

 同様に「経済学(新古典派経済学)」を本質主義的な捉え方と課題解決、経営学を社会構成的な課題把握とその課題解決と捉えると、同様の枠組みで捉える事が出来ます。

 ここでも「経済学(新古典派経済学)」は数理分析による解決を意識し、経営学は社会的に構成された課題とその解決に取り組むことになります。

①「それぞれが意識出来ている社会課題」領域(C/C領域)

  1. ここでは双方が意識出来ていますので、理論的な単純な方策により解決が可能です。
  2. 経営学として構成主義されたの課題の解決が、経済学の理論にて実現することが出来ます。
  3. 但し、うまく解決できない場合は双方に不満が残り、「抑圧」や「妥協」が生まれるエリアでもあります。

②「新たな方策による課題解決」領域(S/C領域)

  1. 経済学の立場から理論的な課題解決の目途はたっていますが、その課題自体が経営学として構成されていない為、経営学としての課題解決に進めないか、課題が解決されているという認識が経営学的には意識されていません。
  2. ここでの経済学からの課題解決が経営学に受け入れられる為には、一旦、経営学的に課題が構成をされているが、まだ経済学としての理論的解決が実現をしていない「未解決の課題把握の領域」(C/S領域)を経由する必要があります。

 

③「未解決の課題把握」領域(C/S領域)

  1. 経営学としての課題が構成されていますが、経済学の立場からの理論的な課題解決が提示されていない領域です。
  2. 経済学としても課題解決が必要となりますが、経済学としての課題解決策はまだ認識されていない領域です。
  3. この領域で経済学としての課題解決を実現するには、経営学の立場からの課題構成の認識をを認識する必要があります。この認識が出来るとS/C領域における既存の数理理論での解決を提案したり、S/S領域にて新たな数理理論的解決を「創発」できることになります。

④「新パラダイム(新たな構成)による解決」領域(S/S領域)

  1. これまで経営学としても認識されていなかった課題を新たな経済学的な発見による数理解決が実現できる領域です。
  2. この領域に到達する為には、「未解決の課題把握の領域」(C/S領域)にての新発見の気づきがあるか、「未解決の課題把握の領域」(C/S領域)から「新たな方策による課題解決」(S/C領域)に展開し、既存の理論的解決を図る中で新たな発見があり、「新パラダイム(新たな構成)による解決」(S/S領域)に展開される場合になります。

 「社会構成主義と本質主義」は、併存していると捉えると「経営学と経済学」を含めてどちらが優位という認識はありませんので、縦横を逆において眺めてみることも出来ます。以下の図の解説は、ここまでの解説内容や目的と離れてしまい、分かりにくくなりますので、図表の提示だけに留めておきます。


☆「意識マトリックス理論」に関するマーケティング関連情報は、こちらを参照下さい。リンク先からから「意識マトリックス理論」に関する論文「マーケティング実務における初心者理解促進と品質向上の為の定性調査体系の試み」(井上昭成,2020)がダウンロード出来ます。