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エドガー・シャイン先生の「経営心理学」Ⅰ~Ⅴ


本日より、『尾川丈一と学ぶキャリコンのためのミニMBAシリーズ プレ講座

 エドガー・シャイン先生の「経営心理学」』が、始まりました。

こちらも最終的には出版されるとのことですので、基本的には補足的な知識を今後の参考にまとめておきたいと思います。

MBAの2回生の前期の最初の方に行われるシャイン先生の講座がベースになるとのことです。

今回は本日第一回から第六回までの忘備録をこちらにまとめる予定です。



【第1回】

第1部 個人と組織:組織心理

 

一回目の講義内容だけは、諸事情により講座の詳細の内容に近いものを掲載しています。


第一回の講義の内容を資料に沿って、理解範囲内で以下のようにまとめています。

 

組織心理学とは?

・組織心理学とはどのような学問か?

 組織心理学を理解する為には、先に発展した産業心理学と対比して把握することが判り易いかもしれません。

 産業心理学とは、固定された外部環境の規制に対して、組織が個人にどのように対応をすれば良いかの視点から捉えることを基本としています。キャリアコンサルティングにおいては修理・治療モデルが有用になる組織の心理学と言えます。どちらかというと、テーラーの科学的管理法を基本とした組織に対する心理学と言えます。

 これに対して、組織心理学は30年以上前にエドガーシャイン先生が提唱されたものになります。外部環境は可変であり、組織内の個人の相互作用である内部環境と外部環境との相互作用も含めた組織に対する心理学ということが言えます。ホーソン実験からメイヨーらの人間関係論、その後のバーナードの組織システム論・サイモンの限定合理性を前提とした意思決定プロセス論等(参考1)に対応した組織における個人の心理学と言えます。人間を経済人として機械的なものと捉えずに人間を自己実現できる存在と捉え、精神的貢献という側面を考慮に入れたものです。クルト・レヴィンやマクレガーを中心とした人間関係学派の流れになります。

個人の個別性を認め、個人の創造性の向上を図り、イノベーションにもつなげる事が出来ます。

 キャリアコンサルティングにおいては、キャリアトランジッション(発達モデル)がその主体になります。

 ここでの全体のポイントは、組織の内部環境と外部環境の相互作用を念頭において考察する心理学が「組織心理学」であると把握ができれば良いかと思います。

 

・組織心理学は複合的観点に立つ

 ここでは、先に出てきた「内部環境」と「外部環境」が、具体的にはどのようなものかということになります。

 ここでの事例では、非対称性ということが理解のポイントになります。非対称とは単純化して表せば、「利害関係」が一致しないというように理解しても良いかもしれません。

 組織内部において組織に帰属をしている被雇用者と経営管理を行う雇用者の関係性は、出来るだけ簡単な仕事を出来るだけ高い給料で働きたい被雇用者と、出来るだけ複雑な仕事を出来るだけ安い給料で働いてほしい雇用者との間に非対称性(Ⅰ)が存在します。この非対称性の調整は最終的には外的経済環境に依存します。被雇用者は同じ仕事が他でより高い給与があれば移りますし、雇用者も同じ仕事をより安く他の被雇用者で充足出来るのであればそうしますので、このような関係性を前提として、人間的自己実現や心理的安息地を確保する為には、キャリアコンサルタントとして外的経済環境を切り口として調整を行うことが可能になります。

 また、組織の外部環境においても、生産者主権(企業→家計(※1))という組織側の立場と、消費者主権(生活構造)という消費者の生活を優先する立場の非対称性(Ⅱ)が存在します。これは、さらに上位環境である外的社会的環境(社会常識や法規等)に依存して調整されますので、キャリアコンサルタントとしては解決の切り口として外的社会的環境を考慮することが出来ます。

 組織心理学では、上記の二つの非対称性を認識する複合的観点にたつことがその特徴となります。キャリアコンサルタントとしては、メタ認知を併せ持つという理解の仕方もあるかも知れません。

 

・組織心理学はどのように発達してきたか

 組織における心理学は先に述べたようにテーラーの科学的管理法(職能管理)を基本とした心理学、つまり個人が「評価され、選抜される」ことを基本とする産業心理学から、人間関係論・組織システム論として、個人がシステムを構成する部分であり、全体を織りなすものであるという個人が「参加」する組織心理学へと発達を遂げてきました。

 外部環境は不変であるとする「産業心理学」では、従業員を管理する「時間/動作研究・標準原価計算・ 外発的動機付け(賃金刺激・労働条件)」が重要視されてきました。

 組織をシステムとして捉え、組織の外部環境との調和を念頭とおく「組織心理学」においは、従業員の自発性を重視する「 内発的動機付け(キャリア・アンカー)・TQC(グループ・ダイナミクス)・QOL(ライフサイクル)」が重視されるようになっています。

 それぞれについての詳細は、今後また別途解説があるかも知れません。

 

・システム的・発達的観点を促した背景

 ここまでで述べたように「組織心理学」は組織をシステム的・発達的に捉えるようになってきたのですが、その要因は次のように示されます。

  1. 質問紙(全体調査法)から、エスノグラフィー(臨界調査法)・通過儀礼(キャリア・ステージ)等の把握法の変化
  2. 一般システム理論(参考2)導入による条件適応理論(仕事の質・相互作用・風土・加齢)への変化
  3. 社会-技術システム論による(個人の防衛機制に対して)企業の社会的防衛機制の考え方
  4. 組織行動の知見の充実。組織の中の人間という視点が加わる
  5. 経営学が静態的な実験室研究 から、動態的なフィールド・ワークにその重心が移ってきた事

 

・本書の狙いと構成

 導入部の最後のまとめとして、本講座の狙いと構成に関する解説がありました。

  1. 組織と個人
    環境である組織と組織の構成要因である個人に焦点を当てていきます。
  2. モチベーション(人間性とモチベーション)
    組織の構成要因である個人の人間性の確保とそのモチベーションを探っていきます。
  3. リーダーシップ(個人➡集団)
    リーダーシップとして、個人から集団に関り方の問題になります。
  4. 属性・特性➡状況対応・コンティンジェンシー➡サーバントリーダー
    組織の個人の属性・特性、外部環境に対応する状況対応・コンティンジェンシーやサーバントリーダーシップ等についての考察を進めてゆきます。
  5. 集団(タックマン:同質的集団から異質的集団へ)
    個人の集まりである集団の変化、同質的集団から異質的集団に進化する要因・必要条件等について学びます。
  6.  組織開発(アクション・リサーチ)

    参考)「アクションリサーチ」とは、上記のように動態的なフィールドワークに比重が移ってきたこととも関連しますが、実践と研究のリンクを行ってゆくことです。クルト・レヴィンの発明とされていますが、
    『簡単に言うと、「目に見えないものをリサーチして見える化し、現場の人々に返すことで、現場を変えていく」というプロセスの中で研究をしていこう、という考え方です。
     アクションリサーチの何たるかは、一般的な「アカデミックな研究スタイル」と対照づけて考えると判り易いかもしれません。‥‥‥‥レヴィンは、アカデミックな研究スタイルに対抗し、「アクションリサーチ」というものを考えだしました。‥‥‥‥
     アクションリサーチの考え方は、のちに、組織開発に大きな影響を与える考え方になっています。』と「組織開発の探求」では解説されています。
    《参考:「組織開発の探求 理論に学び、実践に活かす」
      (中原淳+中村和彦 著 ダイアモンド社 2018年10月⦆

 ※1)講義では別の観点からの解説でしたが、ガルブレイブスが「豊かな社会」で指摘している

 (豊かな社会では)「消費」が「生産」に依存する。(企業主体による消費喚起・計画化)

         ⇧ (1950年代以降のアメリカ)

         ⇧

(貧しい社会では)「生産」が「消費」に依存る。(消費者需要主体による企業の生産)

  (産業革命前後のアメリカ)

  

という企業による「デモンストレーション効果」の強化という企業の社会的課題の視点もあるように思います。

 

参考)J. K. Galbraith ”The Affluent Society” 1958 

「ゆたかな社会」 (ガルブレイス著 鈴木哲太郎訳 岩波書店 1960年)(参考3

 


 追記)

 「ホーソン実験のメイヨーとレスリーバーガーの間などでも長い論争があったとのことでしたが、産業心理学≒標準化管理(科学的管理法)、組織心理学≒能力別管理(人間関係学派)という側面で捉えられることも出来ます、但し、どちらかが優れているという解釈ではないということでした。

 組織の状況や社会の状況により、どちらを優先させるかはリーダーが明確にし、周囲に説明をする必要がある。

本講座の主旨としては、そのようなリーダーとしての判断の基準となる(対比となる)知識を提供してゆくことにある。」

ということでした。

 また、組織開発の支援者(キャリアコンサルタント等)もまたリーダーと同じく、自分の判断を説明できるこのような知識(リフレクションする為のリソース)が今後は更に必要となってくるように思います。


講義で出たキーワードや書籍等についてまとめています。

 

全体では、組織心理学とはどのような学問か?というのが主なテーマでした。 

 組織心理学とは、外部環境は可変であり、組織内の個人の相互作用である内部環境と外部環境の相互作用も含めた心理学ということです。合わせて、組織心理学がどのように発達してきたかについての解説がありました。

 厚労省の資料では、キャリアコンサルタントがキャリアドッグ等での有効な知見をもってもらう為に、「プロセス・コンサルテーション」の手法が有効であるとの記載もあるようでした。

 個人的には、組織について学んでいないキャリアコンサルタントがいきなり多くの知識が必要なプロセスコンサルテーションを理解し実践することはかなり難しいとは思います。一方で、この講座は、キャリアコンサルタント等がプロセス・コンサルテーションの基本を理解する為にも大切だと思います。

 

 今日のお話の中で、次の点が興味を惹かれました。

  1. 経営者と対話する為には、「経営意思に貢献する」という視点が大切であること。つまり、売上を上げたり、利益を確保する視点が大切であること。
  2. キャリアコンサルタントも、他人の目標とクライアントの目標をマッチさせる視点も重要であるという事。
    その為には、トラウマ(心の傷)だけでなく、ゴフマンのスティグマに対応する知識が大切であるということ。
  3. 日本の企業は、「メンバー型」「ジョブ型」を都合よく経営者側が使っていて、被雇用者側が2重拘束をかけられている状態であり、なかなか厳しい状態に感じられるとのこと。
  4. 「実践的共同体」エティエンヌ・ウェンガー著 野中郁次郎解説
  5. 組織内キャリアコンサルティングにおいても「マグネットスペース(他社や近所の方からの情報収取場所の確保)」を設定することも大切になってくる。


【第2回目】

第1部 個人と組織:組織における人間関係

 

 内容的には少し難しく感じられました。文章でまとめることは少し難しそうですので、

今回は講義で出てきたキーワードを整理しておきたいと思います。

  1. チェスター・バーナードの「公式的組織」・「非公式的組織」
     バーナードは組織を「2人以上の人々の意識的に調整された活動や諸力のシステム」と定義しています。
     「公式的組織」は、すごく単純化すれば、その組織の規定に準拠した組織形態です。経営計画にのとって、計画的調整を行う組織のシステムになります。いわゆる会社の組織が代表例になります。組織を構成する課のメンバー、課長、部長etcのことで、また、その関係性ということになります。
     「非公式的組織」の方が幅広く、講義内でも話があったように、その組織内でのメンバー間の給茶室での会話、喫煙者の喫煙所での会話、終業後の任意の飲み会、大学毎のOB会、社内の企業クラブの集まり(OBを含む)など正式な企業組織以外の人々の集合体で、そこで認識されている関係性ということになります。シャイン先生は、「謙虚なコンサルティング」の中で関係性をレベル1~3で示していますが、上記のような例の非公式的組織はレベル3の関係性になる事が多いと思われます。但し、これらが公式組織の持ち込まれると、P85で「レベル3の関係は現代のおよそあらゆる職場環境において倫理的に論外とみなされてしまうだろう。」と示されているように、公式組織にあまり良い影響を与えない面があることに注意が必要です。
  2. 上記の様な企業内での「非公式的組織」での会話や噂は、多くの方が認識されているように「公式的組織」の関係性やそこでの判断に影響を与えます。
     上記の点から、組織を把握する場合は「公式的組織」だけでなく「非公式的組織」を見ておく必要がありますが、「非公式的組織」での動きの把握は難しいものです。しかし、実際には「公式的組織」に大きな影響を与えます。(参考1)
     
    「公式的組織」と「非公式的組織」のずれは、「人事心理学」や「工学的心理学」によって調整する必要があります。
  3. 「公式的組織のモデル」
    講義で紹介された「公式的組織のモデル」であるピン型の基本的な組織形態(命令通りに動く組織形態)の他に「マトリックス型組織」「分権的事業部制組織」「ティール型組織」など、組織自体の発達や社会環境に適応して、組織形態は変化してゆきます。
  4. 組織の「有効性」
    バーナードは組織の働きを「能率」と「有効性」としてみています。「能率」は従業員の満足度を満たすとされています。「有効性」は組織がどの程度周囲の環境との調和しているかと捉えた方がわかりやすいかと思います。
    以下のような事例がを理解の参考に提示します。
     「Ex)アメリカの過去のNO1蒸気機関車会社の事例
     ディーゼル・ガソリンエンジンの時代になっても、それらに打ち勝つべく、効率的な蒸気機関を求め続けた。
    しかし、市場にとってはそれらの企業努力(能率)はもはや有効的でなかった為、結果として倒産。
     ⇒組織の定義・共通目的を蒸気機関会社でなく、交通機関の開発会社とすれば生き残った可能性。
         ⇒それほど、組織に取って目的の設定は大切
          (市場(環境)に対する有効性が組織の存続に取って大切になります)」 (参考4)
  5.   コンティンジェンシー理論
     組織には究極の最適な形態があるという考え方もありましたが、「コンティンジェンシー理論」はその組織(分化した組織を含む)の置かれた環境に適応し、唯一の最適な組織形態はないという考え方です。
     (一方で、組織の発達段階により、組織形態も変化するとも考えられます。(参考5)

 講義で出たキーワードや書籍等についてまとめています。

  1. 「分化」と「統合」
    組織とは一人で出来ない事をみんなで行う場、つまり協働(co-operation)の場です。その為には目標を達成する為の仕事(task)の分化とそれぞれの仕事が目標に向かっているという「統合」(integration)(安全性の保障)が必要になります。
    少し詳しくは同じく(参考5)の下の方に簡単なまとめがあります。
     「分化」と「統合」という側面から、企業は寿命を持ってしまうことにもなります。(cf:防衛的退行)
  2. 「キャリアコーン」とその「中心線」
    キャリアコーンについては、キャリアコンサルタント養成講座のテキストから内容を確認をしたいと思います。
    「このうち外的キャリアの観点からシャインが表したモデルが図表9-2の「組織の3次元モデル」であり、「キャリア・コーン」と呼ばれるものです。
    ‥‥‥‥現実には、個人のキャリアは、これら3つのうちの複数の方向性がかけ合わされて形成されていくことが多いでしょう。」(マンパワー養成講座テキストⅢ P111より)
     このように解説をされていますが、中心線(中心度)との距離がいわゆる社内の「勢力」を表すというところまでは解説はされていません。特に、支援においてブリーフセラピーを意識する場合は、この「勢力」という観点が大切になります。
     講義においては、下から要望された人材と企業の存続文化(中心度)を基準として上位から決める人材の齟齬(権威の逆転など)が発生する理由を説明する形で解説がありました。
  3. 組織の成功に伴う「官僚化(組織社会化)」は、逆に企業の存続にとって危険も伴うことにもなる。(組織の劣化)
  4. 組織の劣化が激しい場合は、キャリアコンサルタントは、組織の「キャリアトランジッション」を勧める必要もある。
  5. 「心理的契約」(上記テキストⅢでも一つの項目として、半ページでの解説がなされています。)
     今回の講座では、組織開発を行う際の「心理的契約」の把握のアプローチをどうしてゆくかという点に多くの方が関心を持たれたように思います。
    「心理的契約」は、講義資料で示されたように組織の協働活動に影響をあたえますが、「心理的契約」自体が明文化されていない契約ですので、個人で違っていたり、部門間で違っていたりもします。その為に社外からの把握はかなり難しい項目です。社内の協力者とパートナーシップを組むという方法もありますが、社内の人事部で全社の「心理契約」を把握しているかというとそれも怪しくなります。
     また、心理的契約が単なる従業員の思い込みの可能性はないのか、組織というコミュニケーション実態は存在しないので「心理的契約」組織の具体的な誰と交わされるのか、社是や組織のディスコースとの契約なのか等の疑問点も出てきます。
     では、組織の「心理的契約」にどのようにアプローチしてゆくのか、キャリアコンサルタントとしては、問題解決の際にクライアントの環境認知を彼の環境である組織で主流となっているディスコースと合わせてゆく過程がある場合は、「心理的契約」に近づく糸口が少し見えるような気もしていますが、今後の大きなテーマが残りました。このテーマに関しては、6月と7月にシャイン先生から直接にお話を聴ける機会があるということで、楽しみです。


【第3回目】

第2部 モチベーション(人間性とモチベーション):モチベーション(人間性)

 

 第3回目の講義で尾川先生が一番押さえてほしいポイントのひとつは、「支援においては『自分の準拠集団と相手の準拠集団を考慮する』ことが大切である」ということでした。ここでは、この点に沿って本日の資料を振り返りたいと思います。
 人によって動機は違う、どういう人間を前提にしているのか考えなければならない、人間性にはどういった種類があるのかを認識することが大切になります。

  1. 「モチベーションと人間性についての考え方」として
     上記の観点から考えると個人の人間性を類推するパターンとしての特徴があるのかどうかということになります。それに沿って人間性の特徴をパターン化して把握する事例と、それぞれは部分的には正しいが、一般化することが難しい事の解説がありました。
  2. 「生物学的誤診:生物学的傾向VS社会文化的環境」として
     人間性については、それでは生物学的な特徴だけでなく、生育履歴などの社会的環境が、人の組織における役割分担や考動を検討する場合に大きく影響を与えるということに関して、各種の事例を踏まえながら解説がありました。
     社会学的に表現すると、「準拠集団を構成する重要な他者とどのように関連付けるか」という難しい表現になります。「準拠集団」は簡単に表現すれば、どのような(社会)環境で育ってきたか。この「重要な他者」はキャリアコンサルディングにおいては、サビカスのキャリアストリー(構築)インタビューの「ロールモデル」に近いものとして捉えればよいでしょうか。過去の経験が現在のキャリア等の選択に影響を与えるという側面になります。
  3. 「社会学的・状況的観点の必要性」
     個人ついての人間性を考える上で、社会学的・状況的観点も必要になります。ここではこの観点に関連し、第一回目の講義で少しお話の合ったアービン・ゴフマンのスティグマに関する解説がありました。スティグマに対してトラウマ(心的外傷)がありますが、これはロジャーズの来談者中心療法で解決が可能なこともあります。これに対して、スティグマに関しては、その解消に向けては「役割期待と役割引受」という観点でもクライアントに接する必要があるとのことでした。トラウマ・スティグマの対応にはこれらのどちらの解消の方が有効かをしっかりと考慮しながら接する必要があるとのことでした。
     どちらが大切かは、最終的にセラピーを受けるクライアントが決めれる様に支援する必要があるとの事だした。
     シャイン先生はロジャーズの系統のゴードン・オールポートとアーヴィング・ゴフマンとともに師事されており、それぞれから人間の内面的な主体性を重視した「キャリア・アンカー」と周囲の期待(状況)を考慮する「キャリア・サバイバル」が生み出されたという側面もあるので、両方の理解が大切であるとのことでした。
  4. 「発達的視点」
     人間性をを発達的視点からの準拠枠を考察すると
      変化しない要因(自分)⇒文化グループ(衣食住など)
      変化する要因(自分) ⇒ライフサイクル(季節・齢による変化)
    以上のようになりますが、キャリアコンサルタントは発達的観点(ライフサイクル)は良く理解できているので大丈夫かと思います。それぞれに対応する施策(中高年対策など)を分ける必要があります。
  5. 「組織的観点」
     組織における個人の人間性の特徴として、組織支配の類型とそれに応じたコミットメントの類型が示されました。
    内容的には「経営組織論」が書かれた当時における基本的な類型として、まずは押さえておく必要があるとのことでした。
     疎外的コミットコミットメントでは「頑張り(我慢)」を評価するとか、計算的コミットメントでは「標準化」された評価をするとか、道徳コミットメントでは「価値の共有の評価」等、それぞれにおいて寄与する心理的契約に基づいた評価が大切ということでした。混合的コミットメントを含めてこの部分がずれてしまうと、「コミュニケーションの崩壊」や「欲求不満」が組織内で発生してしまい、結局、モチベーションにつながらないとのことでした。
     この部分は、リーダーシップのところで詳しく解説があるとのことでした。
  6. 「条件適応理論」
     各種条件について個人は適応をしていきますが、それらに関しての包括的な理論は存在しないとの事です。
    マズローの欲求段階説(人は自己実現を第一に求めて働く存在である)に対して、シャインは複雑人(人は複雑な存在であり、ひとつの人間観では捉えられない)というスタンスを取っているとのことです。
     シャインは、4つの人間観を示しています。第一回のところで出てきた産業心理学の基本ともなる「合理的経済人」、人間関係論の管理技法に対応する組織心理学の基本となる「社会人」、更にアブラハム・マズローの欲求階層説・自己実現理論、C.アージリスの成熟・未成熟のパーソナリティー理論、ダグラス・マクレガーのX-Y理論、F.ハーズバーグの動機づけ理論・衛生要因理論等に基づく自己実現を追求する「自己実現人」。
     さらに現代社会においては、環境などによりそれぞれの個人がそれぞれの目的を混合させているとする「複雑人」を提唱しました。

    (WEBでの「組織文化のマネジメント」という資料の中に、「E.H.シャインの組織文化の定義」という解説があり、講座の理解の助けになるかも知れません。参考

講義で出たキーワードや書籍等についてまとめています。

  • コンバインド・セラピー、コンジョイント・セラピー
    ⇒少し調べてみましたが、充分な理解はできていません。
     単独のセラピーと複数によるセラピーというイメージに感じました。
    コンバインド⇒合併・混合・連合。コンジョイント⇒結合した、連結した。
  • 疾病利得、計算的コミットメント
      治療側とクライアント側でコミットメントがずれる。
      ティーチャーズペット(ティーチャース・クライアント)
       ⇒治療側(道徳的)とクライアントのコミットメントがずれると、表面上の解決的な態度となり、
        本質的な解決がされない(隠ぺいされてしまう)ことがあると認識をしました。
  • クライアント側の不信感が強い場合は、長期療法にならざるを得ない  
     対応を広く(文化人類学的)取らざるを得なくなる。 
      ジェンドリン(フォーカシングで著名)によると、
          「カウンセリングの基本として、より幅の広い人がセラピスト・狭い人がクライアント。」
          (実際の支援現場をみてみると、含蓄のある表現だと感じました。)
  • SLリーダー、状況適応リーダー
    ⇒シチュエーショナル・リーダーシップ理論(Situational Leadership)の略で、日本語では状況対応型リーダーシップ 
  • リーダー・フォロワー・エクスチェンジモデル
    ⇒リーダーとフォロワーの交換モデル(リーダーとフォロワーの相互作用に着目するモデル)
  • セルフコミットメント
    ⇒自分との約束を守る力
  • 臨床心理としては、次の先生方の著書を参考にすると良いとのことでした。
    神田橋條治 村瀬 嘉代子


 【第4回目】

第2部 モチベーション(人間性とモチベーション):モチベーション(管理者の人間観)

 

 第4回の今回は、「モチベーション(管理者の人間観)」というテーマで開催されました。

 前回の講座で出てきたシャインの「合理的経済人」「社会人」「自己実現人」「複雑人」という概念を使って、管理者が部下に持つ人間観により、どのようなタイプのマネジメントが行われ、それぞれの特徴を確認していきました。この4つのモデルはマズローの欲求5段階説と同じく、斬進的なモデルではなく後から出てくるタイプが優れている訳では無いという理解が重要です。「合理的経済人」「社会人」のコンセプトの上に「自己実現人」が存在するという理解が大切ということでした。

  また、今回の講義内容は表題にあるように、管理者の人間観がどのようなマネジメントをもたらし、それが管理される側のモチベーションにどのように影響をするかということを理解することが大切になります。

 

 それでは、資料に沿って、上記のポイントを念頭に当日の資料を確認しておきたいと思います。

  1. 「はじめに」
     報酬制度、報酬、その他人間に関する諸決定は、管理者の人間観によって決まるとの説明があり、管理者が労働者を自発性がないと観ている場合と、労働者が喜びを確かめる存在と見ている場合では、管理者の労働者の関わり方に影響を及ぼすことが解説されました。そのもととなる心理的契約はその組織の社会的契約が相互に大きく影響します。
  2. 「管理者の考え方に影響を与えた仮説」についての解説
     管理者の労働者に対する人間観のモデルとして、「合理的経済人」「社会人」「自己実現人」「複雑人」が紹介されました。
  3. 「合理的経済人の仮説」
     合理的経済人とは、市場経済理論の基礎となっている人間観で、人は自己の損得を第一に(のみを)考えて行動する存在であるという考え方です。「自己統制(合理的感情)が、他己統制(非合理的感情)を管理」を管理すると表現がされていましたが、平たく表現すると、損得勘定が人間的な感情をも押さえて行動する人間の行動パターンと理解することが出来ます。
  4. (合理的経済人の)「管理戦略」について
     ①職務設計⇒仕事の内容と管理をどうするか
     ②刺激制度⇒ボーナスや昇給システムをどうするか等
     ③職務設計⇒何年たてば昇格する等
    等が管理戦略として吟味されますが、一方でそれにより(自主的に)学習しない組織が形作られてしまいます。
    意外にこういう組織は多いのではとのお話がありました。理由はこれらが管理に簡単だからということになります。
  5. 「合理的経済人の例証」として
     合理的経済人を想定した好意戦略をとった場合どういうことが起こるか、
      ①労働組織・経済スペックの調整
      ②競争に勝つために迅速な組織構造の対応
      ③労働者の判断や創造的能力や忠誠心の必要性が低く、年月の経過により「心理的契約の変化→社会的欲求と動機が低くなる⇒組織コミットメントが低くなる」という現象が発生するということでした。
     また、お金がもらえれば良いと言う人もいます。その方には「合理的経済人としての管理戦略は都合が良いと言えます。
  6. 「社会人の仮説」
     ①経済的合理性だけで労働の生産性が決まる訳でない。⇒「ホーソン実験」
     ②合理的経済人の好意性を前提としてもその組織の癖(社会的防衛機能)に反してしまうとうまく行かない。
      システム志向と競争発想に近い。
  7. 「ホーソン実験」
     社会人仮説の前提となったホーソン実験を改めて確認の解説がありました。
     グループの中には自主的な規範があり、作業効率(生産性の増強)を考える場合は社会的メンバーシップを考慮する必要性があります。
  8. 「タビストック・センター」
     ロンドンのタビストック・研究所でイギリスの炭鉱における研究。
    「ホーソン実験」ではグループの規範等の研究はしていなかったので、「タビストック・センター」で更にグループの心理を詳しく分析。情緒的欲求を満たす非公式組織の重要性やそこで生まれる緊張感から社会的組織を結合したり切断したりすることが出てくることが分かった。その結果、公式組織の再編成が必要となる為に、自己統制が奨励(TQC等)される。。
    以上が、社会-技術的アプローチ(人間工学)になります。
  9. 「メイヨー」
     メイヨーの社会人仮説の基づいた管理論についての要点整理がありました。
    トップダウンだけでは、ボトムアップのマネジメントの必要性が確認された。
  10. 「社会人仮説による管理戦略」として
    ここまでの内容を以て「社会人」仮説が出てきます。
     ①部下の欲求の尊重
     ②感情・受容・帰属感
     ③集団刺激
     があげられています。
    ・心理的契約の中に経済外的刺激を含める(社会的一体感)ことが大切である。
    ・経済的な欲求や社会的一体感だけの充足だけでは依存が発生する。依存を助⾧するのではなく、自律を促す必要がある。
    その為には、(傾聴ではなく)ハンブル・インクアリー(問いかけの技術)が大切である。
    非公式組織をも巻き込んだ学習する組織が実現できる可能性があります。
    深読みすると、出来る人だけでなく組織の構成員全体を評価する仕組み(心理的契約に含める)が必要になります。
  11. 「社会人の例証」
     ①ゼイレツニック
     ②ホワイト
     ③シーショア
     ④WWⅡ・朝鮮戦争での事例(好意戦略)
       があげられていました。
  12. 「ホワイトの例証」
     特に、ホワイト・プランの例証がまとめられていました。
    個人の欲求は多様なので、それに対応する組織は難しいということになります。
  13. スキャンロン・プラン
     労使双方での検討(提案審査委員会)
    自律的作業集団ではエキスパートが存在せず問題が発生することがある。
    学習する組織の前提としては、各自が自立・集団規範を大切にしている社会人・合理人やある程度の知識が必要。
  14. 自己実現人の仮説
    経済合理性、社会的合理性だけではうまく行かないので、「自己実現」が大切ではないか。
     もとになる理論として
    ・マズローの欲求5段階説
    ・マクレガーのY理論
    ・アージリスの自己統制と職務拡充
       の紹介がありました。
  15. 「自己実現人の仮説による管理戦略」の事例があげられました。
    ・触媒(プロセス・コンサルタント)
    ・支援者• 権限移譲
    ・心理的契約(自己統制と自己啓発⇒内的動機付け)←経済的合理性の場合は外的動機付け
    ・外的動機付け → 内的動機付け(自己責任)
    ・計算的コミットメント → 道徳的コミットメント(勢力均衡による参加型経営)
    以上の様な視点が必要との解説でした。給与を中心とした自己実現も大切(経済人的自己実現)
  16. 「自己実現の例証」として
    • アージリス(空想的創造性と関与)
    • ダブリン(中心的生活関心事)
    • マクレガー(学習履歴)
    • ハーズバーグ(二要因理論:動機付け要因と衛生要因)
    • スキャンロン・プラン(コスト・カット)
    • マズロー(低次の欲求が満たされれば…必要性?)
     についての解説がありました。
  17. 「要約:複雑な見方での労働者の行動理解の必要性」
    ここまでの「合理的経済人」「社会人」「自己実現人」等は完全に類型化できるのではなく、それらが複雑に組み合わさった「複雑人」という概念をシャイン先生が提唱をされたとのことでした。
    システム志向で経済的合理性、社会的合理性(さぼりが発生する)や自律性・他律性にバランスが大切とのことでした。
    衛生要因と動機付け要因との均衡が大切。採用には経済的合理性、社会的合理性のバランスが大切。

講義で出たキーワードや書籍をまとめています。

  1. デニス・ルソー 「心理的契約と社会的契約」
  2. エドガー-H-シャイン 「ハンブル・リーダーシップ」
  3. 本田宗一郎  「夢を力に: 私の履歴書 (日経ビジネス人文庫)」
  4. エリクソンの漸成的発達理論
  5. ハヴィガーストの発達課題【6つの成長段階を解説】
  6. 「なぜ人と組織は変われないのか ― ハーバード流 自己変革の理論と実践」
  7. 「これからのキャリア開発と組織社会化」


【第5回目】

第2部 モチベーション(人間性とモチベーション):モチベーションの発達的・状況的視点

 

 今回は、「労働者の動機付け、モラール・モチベーションの根源的な見方はなんなのか」という視点で講義がありました。それが、発達的視点と状況的視点になります。

・発達的視点とは、ダーウィニズム(環境的に適した生物は生き残る)に基づく生得的な視点です。⇒不得意な面に現れやすい。=統計学が必要(数学が得意)

・状況的視点とは、社会的に後天的に獲得される性質的な視点です。獲得形質遺伝。学習ってあるでしょと言う視点。能動的に環境に適応できる性質。⇒特異な面に現れやすい。=語学が必要。

 それぞれの立場に立った場合のモチベーション・従業員教育については、どうなるか。⇒X-Y理論に近しい考え方にも感じられる。

・PM理論 

 P機能:課題達成を重視(労働者を発達的視点のみでみる)

 M機能:マネジメント機能(気持ち・参加意欲にも目くばせする)(状況的視点も加えた労働者評価)

日本は、P機能を重視し、マネジメントを任せている。M機能も考慮した人事評価が必要。
 まったくP機能だけでM機能しかないマネジャーがいるか?⇒コンティジェンシー・リーダーシップ

⇒本日のポイント:P機能とM機能の2つの方法で選抜されたリーダーたちが協力してゆく必要がある

  1. はじめに
    ☆欲求や動機は年齢や発達によって異なる⇒ライフサイクルを踏まえる必要性。(定性的評価)=ex.キャリアアンカー
    ☆待遇などの「期待」理論(期待レベル)で切る方法もある。分析レベル⇒業績評価(定量的評価)=行動主義的心理学(ex.スキナー)
    上記の2つは異なった見方。
     上記を踏まえてキャリアカウンセリングをする必要があり。分析レベルはシンプルに評価できる。
     どちらがいい悪いでない。労働者側の欲求も双方ある。双方の影響を良く分析する必要がある。
  2. 人間性の生物学的起源
     本能(金が稼げればよい):社会科過程(世の中や職場グループへの帰属)
     (収入レベルによっても変わって来る面もある:生産性基準理論・向坂)
     実際は上記のふたつについて、内的衝動と外的葛藤が発生する。
     P機能とM機能は葛藤するので、これを最小限に抑えるマネイジャーを選び出してゆく必要がある。
  3. 社会化と幼少期の発達の衝撃
     キャリアアンカーを絶対的に大事にしなければならないか?
    自我(第一次個体分離⇒トラウマ:治療的関り)と客我(第二次個体分離⇒スティグマ:他社による再評価が必要)の理解とその対応の知識が必要。
  4. 職業選択と職業経歴の発達
    職業分類をするのにキャリアアンカー(研究所等向き:MIT卒業生の分析)だけで良いのか。
    定性的分類 ⇔ 定量的分析
     :職場の問題はなんなのか、職業経歴(個々の発達)を評価するのに職業選択の分類基準を持ってゆけばよいのか?
    各種理論や考え方のどれを適応するのか、よく考慮する必要がある。
    選択的に理論を適応できることが大切(exホランド理論等)
  5. 基本的欲求理論の改訂
    マズロー:生理的欲求 - 社会的欲求 - 自己実現、 アルダーファ:生存欲求 - 関係性の欲求 - 成⾧欲求、マクレランド:支配 - 親和 - 達成、 ハーズバーグ:衛生要因 - 仲間 - 動機付け要因の解説がありました。
    どの理論のどの階層にあるかを把握する必要がある。企業の中期経営計画等と連携した職場改善の視点が大切。
  6. 職務価値と職務次元
    諸次元における有意義・責任・努力の評価が大切。
    これが出来ると、自律的作業集団→垂直的職務負荷→仕事の再設計に近づき、ティール型組織等の近づく可能性がある。
  7. 職務寿命(ライフサイクル・ライフワークバランス)
    各段階で対応が異なる。クライアントがどの位置にあるか認識をした上で対応を行うことが大切。
  8. 要約
     生物学的な基礎と社会理論に基づくアプローチでは、個人の職務満足やモチベーションと環境条件が異なるので、
    発達的仮説に基づいて個人差を認識した上で対応することが人事上では必要となる。

講義で出たキーワードや書籍をまとめています。

  1. ロバートソンの「フォラクラシー」と「ティール組織」を見比べてみると理解が深まる。
  2. オーレン・ベニス「Co-readership(副官)」
  3. ヘンリー・ミンツバーグ「マネジャーの仕事」白桃書房((Pの延長線上でない)10の要素がある。特にフィギアヘッド)
    ⇒いろいろな知識からその人なりの経営像を構築して行くことが大切
    参考)「これからのマネジャーが大切にすべきこと」ダイアモンド社
  4. ハーバード・A・サイモン「システムの科学(稲葉元吉訳)」パーソナルメディア (部分的限定合理性⇔外部環境対応)
  5. 浜松フォトジェニック:社内金券システム(金券を使った相互評価の事例)
  6. 組織の問題解決の裏側に、意思決定と人間関係の問題が出てくる。
    因習・慣習は組織開発を阻害する。
  7. ジョン・P・コッター「ビジネスリーダー論」ダイアモンド社(参考:The General Manager)
  8. 組織内キャリア理論(組織内キャリア発達)・ネットワーク組織論(社外も入る⇒ジョブ型雇用)⇒ボーダレス・キャリア 
  9. 三品 和広  (著) 「戦略不全の論理―慢性的な低収益の病からどう抜け出すか」
            「戦略不全の因果―1013社の明暗はどこで分かれたのか」  東洋経済新報社
  10. 今井 賢一 (著), 金子 郁容 (著)「ネットワーク組織論」 岩波書店
  11. 野口 悠紀雄「ブロックチェーン革命 分散自律型社会の出現」日本経済新聞出版