「現代企業の特質と社会の調和」の視座となる「企業の社会的責任シリーズ」についての第2段は、
「企業の社会的責任 ー企業とコミュニティ・その歴史(1900-1960)ー
モーレル・ヘルド著 企業制度研究会訳 1975年1月 (株)雄松堂書店 発行」です。
(THE SOCIAL RESPONSIBILITIES OF BUSINESS company and commmunity by MORELL HEALD 1970)
主に、内容を目次を中心に確認をしてゆきます。
1.19世紀のビジネスにおける社会的責任と慈善
「慈善と友愛は、19世紀のアメリカ人に対して強く求められた理想であった。啓蒙的な人道主義とキリスト教の教えとが、人々にお互いの連携と義務とを思い起こさせた。」(P1)
企業とコミュニティ
「19世紀のアメリカで、隔絶した渓谷や鉱山地帯に生まれた幾百もの会社町では、ビジネスマンがそう望んだにせよ、コミュニティの状況と経済的利害が絡むという現実を回避することは出来なかった。」(P3)
「従って、彼らはその地域の一般社会状況について責任を持ち、またそれに依存をせざるを得なかった。」(P4)
イリノイ州ブルマン市
「ブルマンの町は、啓蒙的な経営政策の一例として広く賞揚された見本市であり、この町に対するブルマン社の投資は800万ドルに上ると推定された。コミュニティには、貸家・公園・運動場及び教会が含まれていた。」(P8)《⇒失敗となる》
「ビジネス・リーダーシップをコミュニティの生活や問題から切り離してしまったことが、有効な社会政策の形式を妨げ続けてきた。」(P10)
戦争・鉄道そしてYMCA
「工業化と社会変動への恐怖の為、何人かのビジネスマンはその経済的利害をより広い社会的文脈の中で考えるようになってきた。」
「こうした問題に取り組む機関には、戦争の生み出した二つの全国組織、すなわち全米衛生委員会、YMCAの支援をした全米キリスト教徒委員会がある。」(P11)
「相互理解及び相互援助の為の新しい方法は、19世紀の斬進さと混乱の中に、わずかに頭をもたげたに過ぎなかった。次の半世紀において現れたより社会的関心の強い企業制度の先駆者として、今日それらの意義を正しく評価できる。」(P16)
慈悲とビジネスの思想
「YMCAと産業界の間に育まれた協力関係は、すでに他の研究によって明らかにされてきたアメリカのビジネスの思想に対する宗教の継続的な影響というものを裏書きしている。世俗的な富と成功がしばしば宗教的に是認されるのであれば、宗教はその富が振り向けられる使途についても影響しうることになる。耳を澄ますなら、数世紀にも及ぶキリスト教とユダヤ教の教えに由来するスチュワードシップの教義や成功者の不幸な人々に対する責任の教義が依然として説かれているのが聞こえてきた。」(P17)
「1889年9月、‥‥‥‥アンドリュー・カーネギーの「富」という簡単な題名の論文である。彼は、成功したビジネス・リーダーは自らをコミュニティ全体の利害の受託者と考えるべきであるという理想を広める上では誰よりも大いなる貢献をなした。」(P19)
「カーネギーは宗教的な伝統を否定しているが、彼の言葉の中には、スチュワードシップというキリスト教の教義の根強い影響が明らかに認められる。重要なのは彼の見解の独自性ということでなく(事実、彼の見解は深い関心を持っていたビジネスマンにとって、指針となっていた強い信念の主張に他ならない)、彼がこの思想を実行に移す仕事にかけた威信と関心の広さおよびその打ち込み方である。」(P20)
「成功したビジネス・リーダーは『芸術の支援者、教育の振興者、文字と科学の友人、あらゆる公共的な改善施策の推進機関でなければならない‥‥‥‥』という希望である。」
「19世紀には欠いていたが、20世紀には持たねばならなかったのは、理論的根拠━ビジネスとコミュニティの関係の概念━であり、そこでは社会的責任は個人の良心や関心にのみ負わせるもとしてではなく、同時に企業の持つ資源にも課せられる責任としてはっきりと認められていた。」(P22)
(以降は準備中です)
