企業と社会 ~現代企業の特質と社会の調和~ まとめ


「企業と社会」シリーズ最終回

テーマ:「企業と社会」問題の解決

 

 諸問題を考える枠組み=講座の主旨

アメリカの企業とアメリカの社会について考察する

・日本の事例としては、

女工哀史・労働問題

公害問題

森永ヒ素ミルク事件・製品欠陥・消費者問題

コンプライアンス問題:事例と解決 等があるが、

⇒これらを考察する枠組みを理解すること

 

Ⅰ.「企業と社会問題」

 考える為の枠組み=理論(Theory) ⇒ex)「お宝鑑定団」=値段の根拠⇐考える枠組み

 理論構築の前提(基礎)

=公準(もっともらしい命題) ⇒ex 経済学=経済人⇒利潤の極大化(人の為には決して損をしない)

 

☆この講座の前提;「思い込み」

人間は思い込みを持つものである

 ある思い込みを持って人間は、自分では事実に基づいて客観的に合理的意思決定を行っていると思い込んでいるが、すなわち信じ込んでいるが、実際にはその意思決定は主観的な思い込みによって左右されており、実際の行動はその意思決定に基づいて行われている。

 

1.企業とシステムの関係性

・システム概念(system)で捉える。(システムとして物事を観る)

ものごと━物体・事象・過程を把握する方法・見方・考え方

 


 システムの3要件

□全体

□部分

□相互依存・相互作用

 

インプット ⇔ アウトプット関係の持続

=システムの存続

組織の存続(存在・生存・運動・均衡状態)

停止した状態

=システムの解体

組織の解体(消滅・死亡・静止・不均衡)

 

・上位システムと下位システム

上位システム:全体

|

部分:下位システム

 

ex.人体(上位システム)と器官(下位システム)

(下位システムの)胃の状態だけが良くても、(上位システムである)人体が機能不全になれば意味がない。人体が機能を停止すれば、状態の良い胃も機能を停止する

 

ex.機械(上位システム)と部品(下位システム)

重要な部品のひとつが優れていても、機械全体が正常に作動しなければ意味がない。機械が作動しなければ、その部品が如何に優れたものであっても意味がない

 

・企業と社会 =企業:下位システム(部分) ⇔ 社会:上位システム(全体)

社会を全体とみなした時、企業は上位システムとしての社会の中に、部分として包含される下位システムである

企業と社会の関係は、社会が「主」であり、企業は「従」である

=企業は社会の為に存在する、企業の為に社会があるのではない

・社会が存続しなければ、企業は存続することが出来ない

・企業は社会存続の為に、「社会的使命」を負っている

・企業は社会の機関(器官)(organ)である(P.H.ドラッカー)

 

企業は社会の為に存在するものなのか?⇒企業の社会的使命(P.Hドラッカー)

社会は企業の為に存在するのか?

⇒社会を犠牲にした利潤(利益)追求

渋沢栄一「道徳経済合一説」

=社会正義の為の道徳に則った利益獲得

 

企業:器官/部品/送電設備

社会:人体/機械/送電システム(全体)

 

経済学(新古典派)(上記の概念を否定する一群)では、

=社会の概念がない

社会を「市場」という概念で抽象化し、企業が利益(profit)を獲得する為に利用すべきものという思い込みを作りだし、一般化させてきた。

=企業が(上位環境である)社会の為に何かをする事が無いという前提

 

2.上位システムとしての現代社会

現代社会(Contenporary Society) cf.Modern :近代以降

第2次正解大戦終結以降の先進諸国の社会(欧米・日本等) ⇒ 社会の変質・変化 = 現代社会の特質(特徴)

現代社会

・資本主義・自由主義社会

・組織社会・オーガニゼーション マン(W・ホワイト) cf.ケネース・ボールディング「組織革命」

・大衆社会(Mass Society) ← マスメディアの操作

アメリカ:プロテスタントの個人主義 ⇒ ミドルクラス:組織に忠誠を誓う

デビット・リースマン 「他人指向」

「ゆたかな社会」=高度大衆消費社会(ロストー)

全体として飢えのない社会

 

3.下位システムとしての現代企業

・官僚制化した巨大規模の組織(強大な影響力)

企業の巨大化 = 大きな目的を達成できる

=企業が(上位システムの)社会を利用する

軍産複合体 (アイゼン ハーバー)

産軍複合体 (ガルブレイズ)

ロビーイング = 政治も動かす

・企業形態;巨大法人企業=巨大株式会社

・専門経営者支配 / テクノストラクチャ支配

株主✖⇒会社法との乖離

・寡占市場における競争

・あくなき利潤追求

 

4.現代企業と現代社会の不調和

・「企業と社会」問題

Corporation and Society" Plobem

≠ ”Business and Society"

         "Enterprise and Society"

社会との関係で企業を考える = 調和

 

 20世紀に入って、特に第二次世界大戦終結(1945年)以降、アメリカ合衆国の研究者を中心に、多数の研究者が解明に取り組んできた問題

⇒なぜか?

◆アメリカ合衆国の国家としての存在意義に関わる問題だから

1776年 独立宣言

1778年 アメリカ合衆国 憲法

理念:「自由の国 アメリカ」

   「民主制の国 アメリカ」

・現代社会の特徴・特質

不調和=「企業と社会」問題 ⇒ 解決=(国の理念とその社会の)調和

⇧    (=相対的問題)

 現代企業の特徴・特質    (⇐ 社会・企業の変化・変質)

 

5.「企業と社会」問題の解決

上位システムとしての社会の存続・発展・維持(全体・人体)

 ⇔                  ⇒(企業と社会を)統合(integration)

下位システムとしての企業の存続・発展・維持(部分・重要な器官)        =維持・存続できる。

 

  

Ⅱ.ふたつの主義とふたつの立場

 

1.ふたつの主義

・「企業と社会」問題 = 「20世紀に入って、顕著化した問題」

ex.A.A.Barle, Jr and G.C.Means

The Modern Corporation and Private Property, 1932

「所有と経営の分離」

「所有と支配の分離」

「経営者支配」

⇒ 企業と社会の不調和

株主の意見が通らない

経営者が意思決定し経営

アメリカ国家の理念と企業の行動が一致していない

 

・資本主義の発達による変化

アメリカの産業化(工業化) (1843~1860年)

19世紀後半(1860年代半ば~1890年代半ば)

「金ぴか時代」 高度経済成長期

19世紀末~20世紀初頭

アメリカ資本主義の弊害 ⇔ アメリカ合衆国の理想との乖離

≒過剰生産による恐慌

━ 物質文明の繁栄と精神文化(プロテスタントの倫理基準)の退廃 ━

 

・労働問題

過酷な低賃金労働 ⇒ 過激な労使対決

| |

人権問題 ⇔ 「独立宣言」:自由・平等・幸福の追求=天賦の権利

 日本:女工哀史

 

☆現代の「企業と社会」問題(日本)

・労働問題 ← 昭和22年労働基準法

長時間労働 → 過労死

 電通の女性新入社員が過労自殺し、労i認定された問題

・違法な長時間労働(10/9~11/7 時間外労働時間105時間)

・パワーハラスメント

電通 鬼十則(訓) = 行動規範

(⇒ 東京オリンピックでの収賄事件(2021年))

 

・経済格差の拡大(19世紀)

極少数の富裕層と大多数の貧困層

 

・資本主義に特有の景気変動

=不況・恐慌

| |

20世紀初頭のアメリカ社会の構造的問題

=社会の機能不全(自由・平等・博愛との乖離)

 

・解決についての二つの主義(アメリカでの大議論)

1.革命主義:社会革命 (Social Revolution)

 資本主義体制を打倒し、社会主義体制を樹立しようとする主義

2.改良主義:社会改良 (Social Reform)

 資本主義体制を前提として維持しつつ、その部分的改良によって、矛盾・問題を解決しようとする主義

C.I.Barnard, The Functions of the Excutive,1938

C. I. バーナード「新訳 経営者の役割」 ダイアモンド社

P.3 第一章 緒論

 「社会改造(改良)(Social Reform)の文献において、現代の不安についてふれない思想はひとつもないが、具体的な社会的過程としての公式組織(formal Organization)に論及しているものは事実上まったく見当たらない」

 

・経済格差(日本)

豊かさの中の貧困 → 教育格差 (2023年には貧しさの中の貧困に変わりつつもあります)

 

・景気変動

ITバブル

1999年~2000年

バブル崩壊 → IT不況

リーマンショック

2008年9月15日 リーマン・ブラザーズ破綻

→世界的金融恐慌

| |

現代日本社会の究極的問題

 

2.革命主義と改良主義(アメリカ構造改革の在り方)

・革命主義:革命による資本主義社会の破壊と社会主義社会の実現

経済体制:資本主義 →革命→ 社会主義

      | |          =自由主義の放棄

一体           (民主主義・自由財産・私的財産制)

  | |

政治体制:自由主義:アメリカ合衆国の建国理念

 

革命主義/暴力革命主義(nihilism) ⇔ 哲学) ニヒリズム/虚無主義

政治体制・社会体制を破壊すべきとする19世紀後半にロシアに起こった思想

ロシア革命(1905~1919年)

| |     1917年3月 ニコライ2世 退位

| |     =ロシア帝国(帝政ロシア)崩壊

| |      絶対王政 → 社会主義

| |      →ソビエト社会主義共和国連邦

| |      (世界初の社会主義国家)

| |      →1991年12月 解体

| |      

社会主義革命/プロレタリア革命

 被搾取階級としてのプロレタリアによって行われる

・資本主義の打倒と社会主義制度の樹立を目的とした革命 (≒社会進化論 = 必然とする考え方)

 ⇒帝政ロシアの王制を打倒

⇔ イギリス革命

フランス革命

アメリカ独立革命

=市民革命/ブルジョワ革命/民主主義革命

 絶対王政→立憲君主制

⇒共和制 = 近代市民社会(自由・平等 自由競争=理想)

資本主義=1920年代のアメリカのエスタブリッシュメント

(既存体制:社会改革を図ろうとする者から攻撃される既存社会秩序の総体

━国家・政府機関・支配者階級・特権階級等━) 

WASP(ワスプ):ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント(当時のエスタブリッシュメント)

⇒もっとも恐れたもの = 社会主義革命/プロレタリア革命

第一次赤狩り(Red Secure)1920年代

F.R.アレン 「オンリー・イエスタデイ」

ex)サッコ・ヴァンゼッティ事件 (物的証拠が無しにイタリア系移民の魚行商を死刑に)

(社会主義=無政府主義:本当の自由が得られる自由主義)

 

・改良主義/社会改良主義(Reformism)

 | |

アメリカ合衆国の選択

資本主義社会の部分的改良による資本主義の弊害の解決

=より良い資本主義社会の実現

| |

一体 維持 → 部分的改良

| |         =自由主義の堅持

自由主義         ⇔企業が関わる諸問題

 

 3.社会改良主義の原点

○社会改良主義を選択した理由

・革命主義/社会革命主義の選択

=革命による資本主義体制の打倒 ⇒ 社会主義体制の樹立

⇒資本主義の放棄 = 自由主義の放棄

⇅        =アメリカ合衆国(建国)の理念の否定

自由主義 = アメリカ合衆国の存在意義

・改良主義/社会改良主義の選択

  資本主義体制の部分的改良による資本主義の弊害の解決

資本主義の維持 = 自由主義の堅持

| |          ||

自由主義 = アメリカ合衆国の理念

 (弊害は現在まで解消されてはいない = アメリカで取り組まれている企業と社会問題)

 

4.ふたつの立場

・改良主義 = 社会改良主義(Reformism)

A.政府の規制による解決(regulation)

B.企業の自由競争による解決(free competition)

 

2大政党の基本的傾向

民主党:規制(regulation)

共和党:自由(freedam)

 

5.ふたつの主義とふたつの立場の整理

・1776年7月4日 アメリカ合衆国の独立宣言

自由・平等・幸福の追求 = 天賦の権利(個人主義) ⇒ 実現する国家の建設

 

1)・1830年代

アレクシス・ド・トワヴィル「アメリカのデモクラシー」1833年

「他の多くの場所では失敗している共和制の議会制民主主義がなぜアメリカでは上手くいっているのか」の分析

アメリカ民主制の弱点・危険性の指摘

現在のアメリカの政治の状態は?

 

2)19世紀後半

アメリカ資本主義の急速な発達=「金ぴか時代」

高度経済成長期

資本主義の弊害 ━ 解決の為のふたつの主義

○革命主義

○改良主義

アメリカ合衆国の理念

 

3)社会改良主義の原点

・マルクス(科学的社会主義)=教条主義 ⇒修正主義:(マルクス主義者による蔑称)

マルクス主義に対する重大な「修正」

エデゥアルト・ベルンシュタイン(1850~1932年)

マルクス主義者 → 修正主義者

論文「社会主義の為の諸前提と社会民主主義の任務」1899年

⇒論争「社会改良か、革命か」

➔社会改良主義(Reformism)

思想・理論

カール・マルクス(1818~1883年)

フリード・リッヒ・エンゲルス(1820~1895年)

「共産党宣言」 1843年

「資本論 全三巻」 1867年・1885年・1894年

資本主義の矛盾・弊害 ━ 労働者階級(プロレタリアート)による暴力革命(プロレタリア革命)

市民革命(ブルジョア革命)

⇒社会主義国の樹立

→共産主義社会の実現

=ロシア革命(1905~1917年)

→ソビエト社会主義共和国連邦 ⇒ 1920年代 アメリカの赤狩り

 

4)ふたつの立場

改良主義 ①政府の規制による解決(regulation) = 大きな政府 民主党

    ②企業の自由競争による解決(free competition) = 小さな政府 共和党

資本主義社会の部分的改良 → より良い資本主義社会の実現

 

アメリカ合衆国の歴代大統領とその政策

政策の基本的傾向

共和党  自由(freedam) ⇐「企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility:CSR)

民主党  規制(regulation)

民主的手続きによって制定された法による規制

17代(1865~1869) アンドリュー・ジョンソン(民主党)

18代(1869~1877) ユリシーズ・グラント  (共和党)

19代(1877~1881) ラザフォード・ヘーズ  (共和党)

20代(1881)   ジェイムズ・ガーフィールド(共和党)

21代(1881~1885)チェスター・アーサー   (共和党)

22代(1885~1889)スティーブン・グリーブランド(民主党)

23代(1898~1893)ベンジャミン・ハリソン  (共和党)

24代(1893~1897)スティーブン・クリーブランド(民主党) ⇒ ここまで「金ぴか時代」

共和党優位 ━→ 企業者的企業の時代 = 自由企業間の自由競争

⇒物質文明の繁栄と精神文化(プロテスタントの倫理基準)の衰退

20世紀⇒

 25代(1897~1901)ウイリアム・アワキンリー (共和党)

26代(1901~1909)セオドア・ルーズベルト  (共和党)

27代(1909~1913)ウイリアル・タクト    (共和党)

28代(1913~1921)ウッドロー・ウイルソン  (民主党) 黄金の1920年代     ⇩

29代(1921~1923)ウォーレン・ハーディング (共和党) 狂騒の20年代      ⇩

30代(1923~1929)カルバン・クーリッジ   (共和党) 狂乱の20年代    政策の違い

31代(1929~1933)ハーバート・フーバー   (共和党) 大恐慌         ⇩

32代(1933~1945)フランクリン・ルーズベルト(民主党) ニューディール政策   ⇩

 

・狂騒の20年代(Rearing Twenties) 

=バブル景気

カルフォルニア土地バブル

フロリダ土地バブル

株式投機(電話・ラジオの普及)(K.クーリッジ・共和党)

1929.10 大恐慌 (H.フーバー・共和党)

ニューディール政策 (F.ルーズベルト 民主党)

テネシー渓谷開発法(TVA)

農業調整法 (AAA)

全国産業振興法 (NIRA)

等を法制化。連邦政府の権限を拡大し、積極的な救済政策をとった。

☆改良主義 = 自由競争(共和党) ⇔ 規制(民主党)

 

6.二大政党の政策とアメリカ社会(1920~1930年代)

共和党(自由競争) VS 民主党(規制) (⇔政権交代)

1)共和党

小さな政府

「夜警国家」:

 国家は外的に侵入を防ぎ、国内の治安を確保し、個人の私有財産を守るという必要最小限の任務だけを行い、その他は自由放任にせよと主張する自由主義国家観(ラ・サール)

産業界の政党=巨大法人企業(「大企業体制」/「計画化体制」) by J.K.ガルブレイス

企業の自由競争 → 経済政策 → 貧困の撲滅 = より良い資本主義

シカゴ:ハル・ハウス(1889)を開設

弱者(低賃金・移民・失業者・障害者)の救済施設

(ジェーン・アダムス:民間人による活動)

・トランプ政権

 

2)民主党

大きな政府・強力な政府

「福祉国家」:

国民に生存権を保障し、平等に福祉(⇒幸福)を分配する国家

政府による企業活動の規制 → 格差の縮小・弱者の救済 → 社会の安定 = より良い資本主義

・オバマ政権

 

 ・大統領

全国民から選出 ━━━→ 大統領 = 優れた人物(に違いないという思い込み)

||               ⇧

||            ||

━━━強大な権力を受託━  ||

 

 

○ 第28代(1913~1921) ウッドロー・ウイルソン大統領 (民主党)

理想主義者・平和主義者 ← プリンストン大学総長・ニュージャージー州知事

「ニュー フリーダム(New Freedam)」 ⇔ 「ニュー ナショナリズム」(セルドア・ルーズベルト)

 

・「ニュー ナショナリズム」(セルドア・ルーズベルト)

19世紀後半登場をしてきた大企業を能率的なものと認め、大企業の有害な独占行為を政府が規制する。

 

・「ニュー フリーダム(New Freedam)」(ウッドロー・ウイルソン)

独占の出現を許す状態そのものを法的に規制し、すべての人々に開かれた自由な機会を与える

・大企業に対する規制強化

・「平和原則 14ヶ条(ウイルソン14ヶ条)」

→「国際連盟」(League of Nations)提唱

1920年設立

1930年代 日本・ドイツ・イタリア脱退、ソ連の除外により弱体化

→「国際連合」(United Nations)1945年発足後、

「国際連盟」は1946年解散。

 

・1919年 ノーベル平和賞

 

○第29代(1921~1923年) ウォーレン・ハーディング大統領(共和党)

 

(ex 江戸幕府 田沼時代 (1767~1786年)

老中 田沼意次 白川藩主 重商主義の政策

老中首座 松平定信 「寛政の改革」(ロシアからの開国要求を退けた)

「白川の清きに魚の住みかねて、もとの濁りの田沼恋しき」)

 

・「常態への復帰」(Normalcy)

・ホワイトハウス内の汚職スキャンダル「オハイオギャング」

・「史上最悪の大統領」

・在職中に死去

○第30代(1923~1929年) カルバン・クーリッジ大統領 (共和党)

・ハーディング政権 副大統領

・弁護士→市会議員→市議会議長→市長→マサチューセッツ州上院議員→マサチューセッツ州副知事

 →マサチューセッツ州知事

・ハーディング大統領の死去に伴い、大統領就任 → 再選

・高潔な人格

勤勉さと貧素な生活と信心とが、成功によって報われるという哲学

プロテスタントの宗教倫理

アメリカの伝統的個人主義

・「サイレント・カル」

文才があり、有能な演説家 ⇔ 寡黙

・ビジネス界の味方

「アメリカのビジネス(本業)は、ビジネスである。」

・自由放任(レッセ・フェール)主義の貴公子

何もしない政府

アメリカ=ビジネスの国

ビジネスの為の政府

||

小さな政府 → 自由企業体制

企業間の自由競争

⇒1920年代のバブル経済

土地バブル

株式バブル

 

○第31代(1929~1933年) ハーバート・フーバー大統領 (共和党)

・鉱山技師 → 「偉大な人道主義者」 → 商務長官

・「クーリッジ景気の中で、大統領に就任」

クーリッジの政策を継承

「猛烈に働く大統領」

・1929年10月 株価大暴落 → 大恐慌

○第32代(1933~1945年) フランクリン・ルーズベルト大統領(民主党)

・大統領4選

・ニューディール政策

多いな政府による規制強化

新規まき直し政策:大恐慌対策で、連邦政府の役割に歴史的大変革をもたらした政策

経済復興の為の多数の法律制定による規制強化

・第二次世界大戦

連合国を勝利へと導いた大統領

 

◎個の自由 ━━━━━━━━ 全体の秩序

|

|

|

 統合

|| いかにして可能か?

 調和

個の自由(巨大企業群)を認め、全体に規制(社会)をかけないで、社会の秩序を保つ

⇒企業と社会問題

 

Ⅲ.自由か、規制か?

1.1920年代後半 ~ 1950年代

1920年代後半

バブル経済(土地投機・株式投機) ← 自由放任主義(※個の自由と小さな政府を強調する思想)7

(クーリッジ景気)

||

古典的自由主義(※)

伝統的自由主義

レッセフェール自由主義

市場自由主義

リバタリアニズム(Libetarianism)

1930年代

大恐慌 → ニューディール政策 = 政府による規制

1940年代

第二次世界大戦

規制(rgulation) → 統制(contorol) ← 自由の制限

 民需  ⇒  軍需

(ex.第一次世界大戦中のアメリカ

  禁酒法)

1950年代初め

フリー・エンタープライズ・キャンペーン(Free Enterprise Canpaign):自由企業運動

 

2.フリー・エンタープライズ・キャンペーン(Free Enterprise Canpaign):自由企業運動

Earl F. Cheit ”Why Managers Cultivate Social responsibility” 1964年

W. H. Whyte, Jr "Oraganization Man”

 

母体:アメリカ自由連盟(American Liberty League)

1934年8月に結成されたアメリカの保守派の政治組織

 デュポンやゼネラルモーターズ等の財界指導者と民主党内の反ルーズベルト勢力を中心としており、ニューディール政策に反対する宣伝活動を大掛かりに行って、超党派保守連合を生み出すに至る一つの端緒となった。

 →1940年に解散 ⇐第二次世界大戦の勃発

 

・1950年代初め(平時体制に戻る)

巨大法人企業による精力的な「自由企業」の宣伝活動

=「史上最大の売込み活動」(W. H. Whyte, Jr)

GM、R&G、リパブリック・スチール etc

ハリウッド映画、コミック本、講演、ラジオ番組、大掛かりな広告etc = 一大産業

少なく見積もっても、年間1億ドル(トップマネジメントとそのアシスタントが費やした時間とエネルギーを除く)

 

・フリー・エンタープライズ・キャンペーンのメッセージ

 アメリカ人の人生においてかけがえのないもの━アメリカンドリームが自由企業体制によってもたらされたものであることに気づかなければ、それは間もなく国家的社会主義の悪夢によって葬り去られるであろう。

規制の強化 → 「企業自由」の制限 ‥‥‥‥‥→ 統制

||                ||

アメリカ合衆国の理念       社会主義

課題:「企業の自由」を維持しながら、「企業と社会」の調和をどのように実現するのか?

 

自由企業体制 ━━━━━━→ 「企業と社会」問題

|                 ||

|             現代の自由企業と現代社会の不調和

|                 ⇩

|             「企業の自由」に対する規制 → 統制

|                 |

━━━━━━━━━━━━━━━━━

自由企業体制の擁護運動

 

課題:現代の巨大法人企業の「企業の自由」を維持しながら、如何にして「企業と社会」の調和を維持するのか?

 

3.「ニュー・ナショナリズム」と「ニュー・フリーダム」 = 自由企業体制の維持

 

・第26代(1901~1909)セオドア・ルーズベルト大統領  (共和党)

●「ニューナショナリズム(New Nationalism)

19世紀後半(金ピカ時代)に登場をしてきた大企業を能率的なものと認め、大企業の有害な独占行為を政府が規制する。」

 

・第28代(1913~1921) ウッドロー・ウイルソン大統領 (民主党)

●「ニュー フリーダム(New Freedam)

独占の出現を許す状態そのものを法的に規制し、すべての人々に開かれた自由な機会を与える」 

 

Ⅳ.自由企業体制

 

1.P.F.ドラッカー(Peter F. Drucker)

Concept of Corporation,1946 (GMの調査書)

 本書は、大戦争や大恐慌などよほどの事が無い限り、アメリカが自由企業体制を捨てる事は出来ないものと前提して産業社会を論ずる。アメリカがが正しく、アメリカの信条が世界を席巻するという事ではない。アメリカにとっては、自由企業体制を機能するほかに道がないという事である。アメリカという国は、いかなる理由にせよ、他の体制では信条と現実の乖離を招き、国として成立しない国だからである。

 従ってアメリカにとって重要な事は、自由企業体制をいかに機能させるか、自由企業体制にはいかなる課題があるか、自由企業体制について何が出来るのか何が出来ないのかを明らかにすることである。

 

自由主義 = アメリカ合衆国の校是

自由企業体制の維持以外の選択肢はない

「私有財産制を基礎とする資本主義経済における個人の企業活動の自由に基づく企業体制」

 

2.ミルトン・フリードマン

1976年ノーベル経済学賞受賞者

新自由主義を代表する経済学者

 

1)古典的自由主義と新自由主義

・古典的自由主義(classical Liberalism)

18世紀末から19世紀にかけての経済的自由主義と政治的な自由主義の結合したもの

ex) アダム・スミス『国富論』 1776年

伝統的自由主義/レッセ・フェール自由主義/市場自由主義

自由放任(レッセ・フェール)の経済によって、内在的秩序、すなわち見えざる手が働き、社会全体の利益になるという考え方

自由な経済活動 → 見えざる手 = 市場の動き → 社会全体の経済的利益の最大化

(福祉)

企業の自由な経済活動 → 市場の働き → 社会全体の利益

||       (福祉)

「企業と社会」の調和

(ex カルバン・クーリッジ)

 

・新自由主義

ニュー・リベラリズム(New Liberalism):自由の為の政府の介入 → 複視社会

 社会的公正を実現することを重視し、個人の自由な活動や自由な市場を実現する為に政府の介入を必要とし、政府の役割として社会保障などが必要とする考え方

 

ネオ・リベラリズム(Neo Liberalism):政府の最低限の介入

 アメリカの1930年以降の規制強化に対し、個人の自由や市場の働きを再評価し、政府により個人の活動や市場への介入は最低限とすべき考え方

ex) M.フリードマン『資本主義と自由』

  レーガノミクス = 市場原理

 

2)フルードマンの主張

「1920年代及び1930年代においては、米国の知識人は資本主義が欠陥のある体制で経済的福祉とひいては自由を妨げるものだということを、そして将来への希望は経済上の事柄に対する政治当局の意図的な統制の程度を拡大するにあるということを圧倒的に信じ込むようになっていた。

ex)フランクリン・ルーズベルト:ニューディール政策

  J.K.ガルブレイス『新しい産業国家』1967年

M.フリードマン(1912~2006)18歳 青年期に大恐慌を経験

J.K.ガルブレイス(1908~2006)22歳 青年期に大恐慌を経験 = 2人は同世代

 

「過去二.三十年間に政府が企てた新しい事業男大部分は、その目的を達成することに失敗した。米国は進歩を続けてきた。米国の市民は衣食住が改善され、輸送も便利になった。階級的、社会的区別は縮小した。少数派集団の不利は軽減された。大衆文化は急速に躍進した。

 すべてこうした事は自由市場を通じて協同する個人の創意と推進力の所産であった。

 政府の諸施策はこの発展を妨げこそすれ、それを助けたのではなかった。我々がこれらの諸施策をこなして乗り越えることが出来たのは、ひとえに市場の並外れた多産性の為である。見えざる手は進歩をもたらす上で、進歩をもたらす見える手よりも一層強力であった。」

 

3.自由企業体制の擁護

 

近代化━自由主義:資本主義経済体制 = 自由企業体制

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資本主義の発達 → 意図した結果(intended effects):経済的繁栄(経済成長・豊かな物質的生活・etc)

意図せざる結果(unintended effects):矛盾・弊害(独占、労働問題と労使対決、消費者問題、公害・環境破壊etc)

→社会システムの機能不全

解決 → 社会改革(Social Revolution:マルクス主義) → 社会主義社会(Socialist Society)

社会改良(Social Reform)→ 資本主義(Capitalist Society)→ 政府の規制による矛盾・弊害の解決

企業の自由による「企業と社会」の調和 = 自由企業体制の擁護 ex)フリー・エンタープライズ・キャンペーン

(free/automy)    ⇒ 市場による調整(M.フリードマン)     

⇩    

 責任による調整(P.F.ドラッカー) (P.F.Drucker  "Management:Tasks, Responsibilities, Practices" 1974)

「企業の社会的責任」(Coreporate Social Resposibility)

「企業の社会的責任」による自由企業体制における自由企業と社会の調和

=現代の巨大法人企業

Ⅴ.企業の社会的責任

「企業と社会」シリーズの結論

「企業と社会」問題の解決 (公害問題の変遷等)

不調和━━━━━━━━━━━━━→調和

⇧ (企業・社会とも変化をし続ける)

「企業の社会的責任」

 

「企業と社会」シリーズ = 企業の社会的責任(唯一の方法)のマクロ分析 (⇔ミクロ分析もある) 

 

シリーズ:企業と社会 = Corporate and Social

≠Business・Enterprise

結論:企業の社会的責任

Corporate Social Responsibility

≠Social responsibility of Business(ビジネス/営利活動/取引)

職人の物づくり/個人の商売~巨大企業の経営

・Social responsibility of Enterpraise

   零細な個人企業  ~   巨大株式会社

公企業(public enterpraise)~私企業(private enterpraise)

 

「企業の社会的責任」論の対象

法人企業の社会的責任(Coreporation)

現代社会における巨大法人企業 = 株式会社の社会的責任

 

1.「企業の社会的責任」論

第2次世界大戦終結後の資本主義諸国の社会

=現代社会において、巨大株式会社が社会との間に発生させている不調和 = 「企業と社会」問題

(cf.R. ハイルブローナー『利潤追求の名の下に ━企業モラルと社会的責任━』の事例)の解決移管する研究と考察)

=総体「企業の社会的責任論」

 

2.「企業の社会的責任」に関する基本的文献と問題の所在

 

1)基本文献

「企業の社会的責任シリーズ」 雄松堂(1975年)

① Oliver Sheldon,"The Philosophy of Mnagement",1924

O.シェルドン「経営のフィロソフィー」

② Morrel Heald,"The Social Resposibilities of Business, Company and Community,1900~1960",1970

M.ヘルド『企業の社会的責任』

③ Clarrence C. Walton, "Ethos nad Executive; Values in Managerial Decision Making" 1969

C.ウォルトン『エクゼクティブの知性』

④ Richard Eells, "The Meaning of Modern Business; An Introduction of the philosophy of Large Corporate Enterprise", 1960

R.イールズ『ビジネスの未来像』

 

2)問題の所在

 「企業の社会的責任」は現代企業にとって極めて重要な課題であるが、その本質についての正しい理解はまだ成立していない。それはこの問題が、企業をめぐる社会の価値観や産業秩序の在り方。さらには経済体制や政治体制にまで全面的に関わる問題であり、従来の経済理論や経営理論では捉えきれない内容を含んでいるからである。……思いつきの対策が闇雲に実行されたりしている・・・・・・企業の経営者のみならず、ひろく国民一般が一日も早くこの問題についての正しい認識を獲得することが望まれる。

 「企業の社会的責任」が問われる様になったことの一般的背景は、まず第一に、・・・・人間的豊かさへと大きく変換してきたという、そうした社会的価値観の変化にあり、第二には、・・・・・予期しなかった企業の社会的逆機能があらわになってきたという事実に求められよう、更に第三に、企業が大規模化し、その社会的影響が大きくなるにつれて、・・・調整役とし視野を要求されるようになったという事情も忘れてはならない。 ・・・・・・・・

 企業とは本来その社会的環境といかなる関りをもって存在するものであるか、全体社会の中における企業の基本的機能はどのようにあるべきか、また企業はそのような社会的要因をどのようにその意思決定の中に取り込むべきであるかについて、実証的研究に基づいた包括的な理解と透徹した洞察を提供している書物であり、それについて学ぶことにより、我々は「企業の社会的責任」を考える為の正しい軌道に我々自身を定置することができるであろう。

 

参照)中川敬一郎先生の前書き(四書への期待、O.シェルドン「経営のフィロソフィー」 1975年)

 

(上智大学 ソフィア・コミュニティ・カレッジでの

小林順治先生の2016年秋「企業と社会 ~現代企業の特質と社会との調和~」の講座内容をもとに作成)