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尾川先生のOD寺小屋 第八回


第8回:CFTを用いたトヨタ自動車広瀬工場での企業文化の変革

多職種協業を阻む、サイロとスラブの打破をどうすればいいのかに迫る。

参考書:「組織セラピー 組織感情への臨床アプローチ」エドガー・シャイン(著)、尾川丈一(訳)、白桃書房:2014)

  今回も講座の内容を踏まえつつ、今後の参考になりそうなこと等をまとめておきたいと思います。

  今回は、なかなか理解がおいつかず、土曜日・日曜日と参加させて頂いてやっと追いついた感じです。

 

今回は、多段階心理関数(ODの定義)の定義の内、

組織:R(組織開発)= f (S(組織デザイン),E(組織文化)

に関して、最後の「組織文化の変革」がテーマでした。上記の副題にありますように、

「多職種協業を阻む、サイロとスラブの打破をどうすればいいのかに迫る。」という内容です。

 詳細については、参考書籍の第3章 トヨタを襲ったパニック 組織変化に応用される体系的短期療法(ブリーフセラピー)にて詳しく経緯が説明されていますので、ご参照下さい。この章では、組織開発におけりMRIブリーフセラピーの活用がここで比較的詳しく提示されていることが改めての発見でした。

 

 但し、今回の内容は少し違い、強固な組織文化をどのように変えてゆくかという内容になります。

 「トヨタ広瀬工場におけるCFT(クロス・ファンクショナル・チーム)」ということで、外部環境の大きな変化の下で、外部環境に対応するために、これまでの過去の成功に基づいた強固な中心度を持った組織文化をどのように変革できるかということがテーマになります。

 この為には、新たな対抗できる中心度を構築する(ツインシステムの実現の)為に、異質的集団を取り入れていくわけですが、もともとの中心度が強い組織ではそんなに簡単に行える訳ではありません。

 参考書に詳しく解説されていますが、外的なショックに組織が対応をする為に、この解決策としてトヨタのこれまでの上下関係を基本としたミーティングでなく、地位が同等な異質な集団によるピア・ミーティングによって意見の抽出を行うということを実現する必要がありました。

 これにより、異質集団を取り入れる下地が出来、

解凍(基本的な想定のリフレッシュ)⇒2軸の中心度の融合(本質的対話)⇒再凍結(標榜価値ではなく(を転換し)、実行価値としての共有)の実現が可能となる。

つまり、これによりレベルⅠ(外部環境の不変が前提)のシングルループから抜け出し、

レベルⅡ(外部環境の変化に対応)のダブルループ学習が実現することが可能になったということでした。

 

 組織文化の変化を引き起こす2軸を構成する為には、前回までに出てきた「バック・オフィス」の拡充や

制度面の知識「組織構造・制度」「組織心理学」「人的資源論」「マーケティング」等の差別化・集中化を提案できるような「チョイス・クリエーター」の知識も大切であるということでした。

 また、プロセス・コンサルテーションとエキスパート・コンサルテーションについてのお話もありました。

こちらも参照下さい)

 キャリアコンサルタントがキャリアドッグ等で組織介入する場合は、プロセス・コンサルテーションだけではなく、ゲートウエイキーパーとしての「チョイス・クリエーター」(選択肢の提示)の役割を果たすことも必要とのことでした。その為に「エキスパート・コンサルテーション」の知識も大切だということでした。

  柔軟な体制を持った会社ならば、「プロセス・コンサルテーション」だけでも対応が出来るが、エスタブリッシュな会社に対して、「エキスパート・コンサルテーション」としての「チョイス・クリエーター」の役割も担えることが大切ではないかというお話でした。

 

・組織開発には、2流派があり、「チョイス・クリエイト」の為には両方の理解が必要とのことでした。

☆人間関係学派(人間的側面) どちらかという組織構成員の内面的改善 (エドガー・シャイン等)≒組織は一定

  ☆選択の限定合理性を前提   サイモン、バーナード (ex 意思決定の分類)⇒組織変革

⇒外部環境への対応 ローレンスとロッシュ コンティンジェンシー理論
          マイケル・ポーター  競争理論         

               等の知識も本来は必要とのことでした。

◇コンティンジェンシー理論

 G.M.ストーカー、J.ウッドワード、P.R.ローレンスとJ.W.ロッシュらは、環境と交換関係にあるオープン・システムとしての組織が環境へ対応する様式を問題とし、実証研究を展開した。この様な理論をコンティンジェンシー理論という。

 以上の様なマクロとミクロのアプローチを統合し、一般理論を構築しようという試みとして、C.I.バーナードの〈協働システム〉、H.A.サイモンの〈意思決定〉等の概念を中心とした一般理論があるが、今のところ、組織論では一般理論構築よりも、中範囲の理論を志向した研究が盛んである。・・・・(世界大百科事典「組織論」より)

(バーナード・サイモン・ポーター等については、こちらに簡単に引用をまとめています。ご参照下さい。

来年の尾川先生の組織心理学を学習する際にも参考になるかも知れません。)

 

参考)制度学派

 家族,株式会社,労働組合,産業団体,国家等の経済組織の要因や社会的・政治的要因によって経済現象を究明する米国の経済学派。1880年代から1930年代にかけて形成された。歴史学派の影響下に限界効用学派の純理性を離れ,社会心理学的概念を導入して諸制度の実証的研究に進み,社会改良を説いた。

 (百科事典マイペディア「制度学派」より)

 制度学派はブログのこちらの中に出てきますので、参照下さい。(J.K.ガルブレイスが著名な一人)

 


 その他のお話としては、

・マイケル・ホワイト ナラティブ・セラピーの紹介もありました。

考えるに「問題の外在化」という視点で今日の講座の話を捉えて見ると、

 

レベルⅠ 組織の中の問題として、既存の組織で解決を図ろうとする。

レベルⅡ 問題は組織の環境にあるとして、組織の変革を図る。周辺部の影響も行われる(双方向)と解説されています。この点から、つまり、組織の問題は外(環境)にあるとして解決を図ろうとする。これが「問題の外在化」、つまり、マイケル・ホワイトのナラティブ・セラピーに通ずるという趣旨のお話だったではないかと考察をしています。

 

・ローカル・ラダー (組織内おける選択)

 コスモポリタン・ラダー(社会における主体的選択)

 バウンダリーレス・キャリア

 

・ミンツバーグ 「マネジャーが大切にすべきこと」

  プライマリー・コンタクト

  創発的戦略

 

今回の一連の講座の資料で、「社会学の準拠枠」というマトリックス図表が出てきて、すごい内容だなと感じたのですが、引き続く「組織心理学」の2年の講義を経て、また再びこのマトリクス図表に還って来るとのことでした。楽しみです。