シグムント・フロイト

 フロイトに関して少しおもしろい著述をみつけたので、ご紹介します。ちょっとなにか以前からなんとなくモヤっとしていた感じが、少し納得出来ました。それは、次のような描写です。

「それはウィーンからやってきた。シグムント・フロイトは十九世紀末に、精神分析に関する最初の著書を出版している。フロイト流の福音がアメリカの一般大衆のあいだにまで、極めて広範囲に流布し始めたのは、(第一次)世界大戦後のことであった。戦争の結果、不評を蒙らなかった唯一の知的勢力は科学であった。・・・・セックスは人類を動かす中心的、普遍的な力であるかのように見なされた。ほとんどすべての人間の行為の動機がセックスに帰せられた。・・・・精神衛生にとっての第一の必要条件は、抑制されない性生活を行う事であった。健康で幸福でいたければ、我々はリピドーの命ずるままに行動せねばならない。・・・・応接間の小テーブルやま麻雀卓を囲んで━インフェリオリティ・コンプレックス、サディズム、マゾヒズム、エディプス・コンプレックスなどの新語がさかんに振り回された。・・・・自制の効用を説く聖職者たちは、無遠慮な批評家から、自制などというのはもはや時代遅れで、実は危険なことなのだ、と警告されたりした。」(P137~)

(オンリー・イエスタデイ(1920年代・アメリカ)  F.L.アレン著 ちくま書房)

 これは、大変奔放な表現にはなっていますが、1920年代初めの女性のスカートは皆くるぶしまであった時代の話です。でも、時代の中のフロイトという観点からは、面白いと感じました。フロイトというと「抑圧」という言葉を思い出しますが、なるほどという感じです。