「企業の支配動機」とキャリアカウンセリング

― 対話から組織を変えるという視点 ―


 

1.キャリア支援と社会の改善はつながっている

 

 キャリアカウンセリングは単なる個人支援とは位置づけません。

一人ひとりの働き方を支援することは、その人が属する企業や組織の在り方にも影響を与えます。

そして企業活動は、社会全体に影響を与えています。

だからこそ、

キャリア支援 → 組織の変化 → 社会の変化

という連鎖を意識することが重要です。

 


2.企業の「支配動機」とは何か

 

企業は、何を目的に意思決定をしているのか。

もし企業の支配動機が

  • 利益至上主義

  • 経済合理性のみを基準とする判断

  • 外部不経済への無関心

であるならば、

企業活動が社会全体の改善につながるとは限りません。

従来の新古典派経済学では、

企業が利益を追求すれば、市場を通じて社会は最適状態に近づく

と説明されます。

 

 しかし現実の社会を見れば、それだけでは説明できない現象が多くあります。

特に2020年のコロナ禍では、企業や社会が「利益だけでは動いていない(動いてはいけない)」ことが明確になりました。

企業はすでにもともと定義をされていた、

  • 社会的責任(CSR)

  • ステークホルダーへの配慮

  • 持続可能性

を無視できない存在になっています。


3.では、その「支配動機」は誰が決めているのか

 

 現代の組織では、意思決定は経営者個人だけでなく、

  • 専門家集団(テクノクラート)

  • 経営幹部層

  • 外部有識者会議

などの相互作用の中で行われます。

 つまり、企業の支配動機もまた、固定された本質ではなく、

組織内の対話と関係性の中で形成されていると考えることができます。

ここで社会構成主義の視点が重要になります。

 


4.支配動機を変えるには何が必要か

 

もし企業の方向性が、組織内部のナラティヴ(語り)やディスコース(意味づけ)によって

形成されているのであれば、制度を変えるだけでは不十分です。

必要なのは、

組織の語りを変えること
対話の質を変えること

です。

 ここに「対話型組織開発」というアプローチが生まれます。

 


5.キャリアカウンセリングが果たせる役割

 

 キャリアカウンセリングは、

  • 傾聴

  • リフレクション(内省の促進)

  • 意味の再構成

を中心とする実践です。

 これは、社会構成主義やナラティヴ・アプローチと非常に親和性が高い方法です。

個人との対話を通じて、

  • 働く意味の再定義

  • 役割理解の再構築

  • 組織への関わり方の変化

が生まれます。

 その積み重ねが、組織全体の語りを変え、最終的には「企業の支配動機」にも影響を与え得るのです。

 


6.支援のスタンス

 

 キャリアカウンセリングは「個人の適職探し」ではなく、

組織文化と意思決定の質を変える対話実践として位置づけています。

 企業の支配動機は固定されたものではありません。
それは、日々の対話の中で更新され続けています。

だからこそ、キャリアカウンセリングは社会の改善に接続し得る実践なのです。