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尾川丈一先生のOD寺小屋 第二回


 昨日尾川先生によるOD寺小屋の第2回目がありました。

 前回と同じく尾川先生がお話された内容そのもではなく、それをどう捉えたかという視点で書き留めておきたいと思います。

 

 今回も「多段階心理関数(ODの定義)」

 

• 個人 R(キャリア選択)=f(S(キャリア・アンカー),E(キャリア・サバイバル))⇒

• 集団 R(チームの成長)=f(S(リーダーの選択・排斥),E(位相変化))⇒

• 組織R(組織開発)=f(S(組織デザイン),E(組織文化)

 

 に基づき、前回は「プロティアン・キャリアとボーダーレス・キャリア」として個人に焦点があてられていましたが、今回は「マズローの欲求5段階説とタックマンのチームビルディングの5つのステップ」として集団に焦点があてられていました。

 

 まず最初にマズローの欲求5段階説が紹介され、クルト・レヴィンの心理関数(個人心理学)

R(反応)=f(S(刺激),E(内部環境))

における刺激の部分に、個人の欲求が低次ものまで当てはめられるとの事でした。

 

 組織開発にあたっては、これまで組織⇔個人の一般システム論による「個人は全体、全体は個人である」と捉えがちだったので、今回のその間にある集団という概念は新鮮に感じました。ただ、全体の理解は組織に焦点をあてられた部分を理解してからになると思われます。

 

 個人に関する環境適応関数が「キャリア・サバイバル」になるのですが、先生によると「キャリア・アンカー」ばかりに焦点が当たってしまっているのが現状とのことでした。キャリアカウンセリング型組織開発®では、キャリアコンサルティングにおいても社会構成主義をマインドセットにしていますので、タイプ判別によってコンサルタントの意識が固定化してしまう事もあり「キャリア・アンカー」もあまり意識することはありません。また、キャリアを活かした転職経験が多くない日本では、前回ご指摘のように「キャリア・アンカー」も未成熟な事も多く、こちらからわざわざそこに焦点を当てていくこともありません。

 そんなこともあり、基本に戻ってキャリアコンサルタントの養成講座テキストから「キャリア・サバイバル(職務・役割の戦略的プランニング)」の項目を確認してみました。そこでは、

『「キャリア開発の視点の本質は、時の経過に伴う個人と組織の相互作用にある」とシャインは考えています。

(最初の説明で、この相互作用という視点が他のカウンセリング理論とは違う点として紹介されています。)

 そして、キャリア・アンカーは個人の内的キャリアを表すのに表すのに有効な概念ではありますが、その一方的な実現だけを個人が追及しても、組織ニーズとの調和には至りません。・・・流動的に変化する環境と、その職務や役割に対する影響を定期的に理解する事も重要です。』と、紹介されています。

『このような考え方から、シャインは「職務と役割の戦略的プランニング」というツールを開発しました。このツールはキャリア・アンカーと一対であることを示す為に「キャリア・サバイバル」と名付けられています。・・・具体的にはオープン・システム・プランニングと呼ばれる手法を応用し、以下の6つのステップに分けて個人の職務と役割を分析し、プランニングします。』

として、次の6つのステップと合わせて紹介をされています。

  1. 現在の職務と役割を棚卸をする
  2. 環境の変化を識別する
  3. 環境の変化が利害関係者の期待に与える影響を評価する
  4. 職務と役割に対する影響を確認する
  5. 職務要件を見直す
  6. プランニング・エクササイズの輪

とされています。このようにキャリア・コンサルティングにおいて「キャリア・アンカー」と「キャリア・サバイバルが」が正しく解説されていない訳ではないですが、ただ、キャリアコンサルティングの実践において活用が進んでいるかどうかについては、やはり不明確に感じています。

 

 さて、今回の集団についてですが、位相(環境)変化により、リーダーの選択・排除が集団内でおこり、その結果、位相(環境)に適したリーダーが選択されることにより、チームの成長という結果が得られるという事でした。Capabilityを持った派閥の存在が大切でもあるということでした。例えとして今回の自民党の総裁選で派閥が無ければ全議員の中から選ぶことになり、適任者の選択まで長い時間がかかってしまうことが例として挙げられていました。

 

 リーダーのタイプの選択には組織の凝集性が影響することを確認をした上で、続いて、タックスマンモデル(位相変化)について中国旅行における具体的な体験を交えながらの解説がありました。

 

 群衆(単なる集まり)⇒Gang Group(同一行動の強制)⇒(高度化)⇒Forming(規範形成)=Chum Group(同一認知)=Task leader(専制的リーダー)⇒Storming(混乱期)=グループの文化と対立(Fight Flight)=課題達成リーダー×社会感情リーダーSocio Emotional Leader(民主的リーダー)⇒Norming(統一期)=Emergent Leader(自然発生的リーダー)=Peer Group(異質認知)⇒Performing(機能期)=ティール組織(サークルメンバー)

 

 この経過の中で、「課題達成型リーダー」「社会感情的リーダー」や「Emergent Leader(自然発生的リーダー」等が集団の変化に合わせて、成り代わって出現し、グループの形成を担ってゆくとのことでした。

 


「キャリア・アンカー」と「キャリア・サバイバル」については、実際の転職の経験がないとなかなか実感することは難しいように思います。他社、特に違った業界に転職をした場合、いくら人事や企画、営業の過去のキャリアがあり、有能で転職でそれを活かすといっても、新しい組織では一旦はまったくの新入社員になり、わからないことだらけの状況からスタートします。やはりこの原体験がないとなかなか理解が難しいかも知れません。逆に、転職を繰り返すアメリカではそのような新しい環境の中で自身の位置づけを確保し続ける為に、「キャリア・アンカー」の概念が必要となると感じます。そして、アメリカではあくまでジョブ型の転職であることも大きく影響します。

 一方で本来その「キャリア・アンカー」と対になる「キャリア・サバイバル」ですが、8~9回転職する事も珍しくないアメリカでは、転職回数が多いと、当然新たな会社の期待に早く答えて組織に中に溶け込む必要があるので、「キャリア・サバイバル」はより意識する必要があります。逆に、転職の機会が多くても2~3回までが主流の日本の組織社会のおいては、解雇や転職を含めて組織社会の荒波を「サバイバル」して乗り越えてゆくという意識がまだ希薄な状況でもあり、浸透がまだしにくいように感じます。「サバイバル」の意識なく「オープン・システム・プランニング」を眺めても、自社内における社内の調和の為の役割認識としか捉えられないかも知れません。

 同じ会社にずっといる人達には会社にそれなりの不満等を持っていても、50歳を超えて初めて転職する勇気を持つことは、相当に勇気がいるハードルの高いことと感じているようでした。また、定年までは漠然と会社が生活を守ってくれ、必要ならば転職の支援までもしてくれるというような概念の中では、「サバイバル」という事自体の理解がなかなか難しい様にも感じます。

 「キャリア・サバイバル」が浸透していない組織社会では「キャリア・アンカー」も意味をなさないようにも感じるのですが、日本人はもともと星座占いや血液型占いが好きなように、「サバイバル」と切り離され単なるMTBIのようなタイプ分けの概念の扱いになっているようにも感じます。

 ただ、50歳以降の世代の現在の実情を直接見て、若い世代ではより転職によるキャリアアップが前提になってきているようにも感じます。その意味からは、「キャリア・アンカー」「キャリア・サバイバル」の理解が日本の組織社会で浸透をしてゆくのは、これからのような気もします。