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組織内における意識マトリクス理論


 M.P.フォレットは「創造的経験(1924)」において、組織内における各自の「経験」の交織から「軋轢」・「統合」から「創発」にいたる過程を示していますが、意識マトリックス理論でその「創発」に至る枠組みを考察することが出来ます。

 ここでは、組織内における対等な個人間における枠組みを意識マトリクス理論を使って確認しています。

 それぞれの個人は自らの経験(知識)に意識があります。また、新たな他者の経験との交錯があると何らかの軋轢が発生します。

 ①C/C領域(交錯・軋轢の領域)

  1. この領域では個人A・Bのそれぞれの経験(知識)が交錯し、両者の間で軋轢(コンフリクト)が発生します。
  2. この領域で軋轢を解消する結果として、「抑圧」「妥協」「統合」があります。
  3. 個人A・Bがそれぞれ相手の経験(知識)を尊重できない場合は、モノロジックな対話の結果、「抑圧」「妥協」という軋轢による不満が解消されない状態で解決が図られます。この組織内における「抑圧」「妥協」の状態を解消する為にはキャリアコンサルティングを活用することが出来ます。
  4. 軋轢(コンフリクト)は、個人A・Bがそれぞれ相手の経験(知識)を前向きに認知することにより、「統合」という形で解消されます。これは個人A・Bに今まで意識していなかった新たな経験をもたらし、C/S領域・S/C領域に展開され、「統合」という形で解消されます。

 ②C/S領域・S/C領域(統合の領域)

  1. この二つの領域では、個人A・Bは対等ですので同じ意味づけになります。この領域では相手の経験(知識)を尊重して「統合」している状態になります。これを効果的に行う為には、ここでもそれぞれが相手の「経験を傾聴」することが大切になります。
  2. ここでは、相手の経験(知識)を認識することにより、新しい経験へ踏み出している状態です。
  3. 個人A・Bは、自己効力感が維持される必要があります。これによ、前向きな経験の「統合」の実現が期待できます。

 ③S/S領域(創発の領域)

  1. ここでは、②における個人A・B両者の「統合」の状態を経て、「創発」が出現する領域です。
  2. 個人A・Bが「統合」の状態から新しい経験を経て、お互いの「リフレクション」により、それまで個人A・Bとも経験していなかった領域で「創発」の実現が期待できます。
  3. 「創発」に至る為には、相手の「経験を傾聴」することと、「リフレクション」が大切になります。
    この関りは、「経験代謝」を理解し実践できるようになることにより、確実に行えるようになることが期待出来ます。
  4. この状態において、ダイアロジックな相互交流が実現し、組織内で正のグループダイナミックスが生まれるとも言えます。

☆上司にキャリアに関する知識がない場合は、部下と対称的な関係性の中でこの枠組みで1on1の対応を行うことが出来ます。この場合でも上司に「傾聴」のスキルは必要となります。

☆組織内おいてより結果を出せるように、「正のグループダイナミックス」を生み出すという視点から、上記の枠組みをグループ・組織に適応し、組織内の関係性を「統合」更には「創発」にもってゆくように、「傾聴」を使ったファシリテーションに応用する事も可能です。



続いて、意識マトリクス理論(営業活動)に続きます。



☆「意識マトリクス理論」についてのマーケティング関連情報は、こちらを参照下さい。

 リンク先からから「意識マトリクス理論」に関する論文「マーケティング実務における初心者理解促進と品質向上の為の定性調査体系の試み」(井上昭成,2020)がダウンロード出来ます。

参考)創造的経験  M.P.フォレット著  監訳者 三戸 公 (2017年7月 (株)文眞堂)


ブログでは、内容を分割して紹介をしていますが、「意識マトリクス理論」をまとめたページは、こちらになります。