· 

尾川先生のOD寺小屋 第四回


昨日も、下記の内容でOD寺小屋が開催されました。

 

第4回:ティール組織(認識論)とホラクラシー(方法論)

ネットワーク組織の柔構造的側面を考える。

参考書:『組織セラピー 組織感情への臨床アプローチ』(エドガー・シャイン(著), 尾川丈一(訳),白桃書房, 2014)

 

ティール組織とその手段であるホモクラシーの解説がありました。

(狭義の)ティール組織が実現する為には、

・分散型組織

・ホモクラシーの分散型システムを支える技術的成熟(例:グロスフラッグ(Glass Frog)

・自律的人材が構成員の多数を占める。

の3つが必要であるということです。

 (上記の中で、自律的人材について、いわゆるオーガニゼーションマン(他人指向型)の中でセルフマネジメント(自主経営)が出来るレベルの人材ならサークル内での調整も可能そうですが、イノベーション視点の起業家精神(アントレプレナーシップ(Entrepreneurship)を持つジャイロスコープ型(内部指向型)人材が多数だとかなりサークル内での収拾が難しくなりそうです。ここでの自律型人材についての確認も今後の視点として必要だと感じました。) 

 資源分配等課題もあり、全ての組織がティール組織となるのは難しいという見解でした。

 

ホモクラシーについては、その実現に向けて

「ブライアン・ロバートソンが提唱した、体系化された組織運営システム」であり、

人体における臓器のように、部分が自律的に動いて全体調和を図る経営を目指す自発的だが規律重視の経営システムであるという事です。それには、サークル憲法が必要になります。

 

自主経営システムにつながる、5つのルール(原理原則)。

• 職務役割と職務・義務として負っている責任を緻密に計画する。

• 多職種協業の規則を明確にする。

• より良い会議を開催する。

• 職務役割に経営行為を起こす権限を持たせる。

• 進化で焼き固める

という事ですが、これらをフラットな組織どのように具体的に決めて実行してゆくのか、大変興味深く感じました。

 


 ティール組織の実現はかなり難しいものだと感じています。現在、ティール組織っぽい組織形態に属しているのですが、

  1. サークルの内における個人間の利害関係の調整が難しい。フラットな機能ゆえに判断する人がおらず、組織としての調整機能がなく意志の統一調整が難しい。特に自律性が高い人材ほどそれぞれが正しいと判断する傾向にありますので、課題解決がサークル内で平行線になってしまう危険性が高く、サークルとしての機能維持がとても難しい状況になります。
  2. 新メンバーへの研修や組織文化の伝達が難しい。フラットな組織になると誰が新規参入メンバーの業務の研修サポートをするのかも不明確になります。自律的な人材と言えども、新組織に加入時には最低限の知識吸収が必要ですが、誰がそれを行うのかが不明確な為、本人の自助努力に負う部分が多くなり、充分組織で活躍できるまでの時間がかかってしまいます。その結果、組織のパフォーマンスが下がってしまいます。仮に、そのような研修指導を行う人材を配置を進めると、フラット性自体が失われてゆきます。
    上記の2点からは、全体性の確保を実際どのように確保するのかが、フラットな組織ゆえ難しくなるように感じます。
  3. 組織文化と上述しましたが、ティール組織に組織文化が形成されるかどうかは微妙です。もちろん、目的は設定されていますが、自律的に思い思いの方法で達成するすることになりますので、そもそも全体性を維持できる組織なのかどうかという疑問も出てきます。また、組織の目的の柔軟な進化もティール組織の全体性との絡みで結えば、実際にどのように行われるのかイメージが難しく、現実的には結局ガバナンスサークルを中心としたミーティングによる調整が終始行われるように思います。そうなると、ヒエラルキー組織と変わりませんし、リーダー不在の分調整コストがより大きくなるように感じます。
  4. 尾川先生も講座の中で指摘されていましたが、上記の様な課題もあり、大規模な生産形態や多国籍企業においてはティール組織としての組織存続は難しい様に感じました。
  5. アージリスは、
    「人々中心管理を組織の”素描”のひとつに扱う事も拒否する。「心理的成功を体験できる組織であるという事は、その組織が人々中心の組織であるという事にはならない」‥‥心理的成功は、成否の公算も定かでない、手応えのある、それゆえに現実的な目標に向けて努力する場合にして、はじめて獲得できるものであった。」
    「すなわち、いう。エリクソン、マズロウ、ロジャーズは、自己実現が成長の方向性であるとしているが、(アージリスには、必ずしもそうとはばかりは言えぬことが見えてきた。なぜならば)感情鈍麻・(無関心・)自己疎外に向けてだって自己実現が出来るからである。自己実現は全部が全部、我々が期待する組織人としてプラスの意味を持つものでない。‥‥‥つまり悪い方への成長である。これもまた成長であることに間違いはない。そしてこの場合、この段階・水準では、いい方悪い方のいい悪いの基準を何に置くかが出ていない。」
    「かくて、自己実現あるいは成熟が、組織人の基準として十分なものではないこと。そしてさらに、いい悪いの基準を求めねばならぬこと、この二つが、1957年以降、X工場Y工場の実態を調査した(著書で言えば1960年著)以降のアージリスの課題となる。言い換えれば、エリクソン、マズロウ、ロジャーズからの離陸であり、57年自著からの脱皮である。」
    としています。この観点から言えば、組織における自己実現のいい悪いを決める為には、目的の設定だけでは難しく、これを決定する階層(ヒエラルキー)がやはり必要になるように感じます。
    「アージリス研究 ―行動科学による組織原論ー(大友立也著 ダイアモンド社 昭和44年7月)」より参照。

上記の観点から、特に大規模組織においては構成員の居心地の良さが前提となるようなティール組織の存続は難しいのではないかと考えています。


 一方で、アージリスの業績の中に「混合モデル」というものがあります。組織の要求と個人の欲求を統合するモデルです。

組織の本質的属性を6次元に分け、左の端はピラミッド型(ヒエラルキー)組織の状態であり、右端に行くほど個人と組織が自律的に機能している状態というものです。この内容を詳しく調べてみると、右端がティール組織の特性と似てくるように感じました。

 なかなか理解の難しい「混合モデル」なのですが、成程と感じるとともに、ティール組織の原型が50年も前から提示されていることを考えると、やはりなかなかティール組織の実現は難しいもののようにも感じました。

 また、右端の状態は、M.P.フォレットが主張した組織は職能をベースとして構成されるという考え方とも近い様に感じました。


 他に今後参考にするべきお話としては、

・ミンツバーグによるマネジャーの10の役割(それに優れたマネジャーの「7つの糸」もありました。)

・アジャイル=敏捷性・柔軟性

少しあやふやになりますが、

・アダム・スミスは、「ツイン・エンジン論(統制2割・自由8割のバランス)」として、「道徳福祉論」・「国富論」を世に送り出した。

・シンボリックマネジャーには、「複雑性」「開放性」「流動性」必要

とのお話もあったように記憶しています。